地球科学への誘い

ちがくやってみない? / 2022-06-18T00:00:00.000Z

センター試験、そして現在の大学入試共通テストの理科②(基礎無しの物理・化学・生物・地学)などにおいては、「得点調整」というイベントが発生します。入試専門サイトではないのでざっくり説明させていただくと、これは物化生地が含まれる理科②や地歴、公民などの、科目内にさらに細かく科目があるもので、その科目間で得点差が大きくなってしまう場合があります。これでは科目選択によって不平等が出てしまうことがあるので、それを調整する、というものです。

しかしこの得点調整が行われるためには「原則として,20 点以上の平均点差が生じ,これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合(令和3年度大学入学共通テストにおける得点調整についてより)」が必要とされています。ここで例に挙げた令和3年度(2021年1月実施)の理科②の点数を見ていきましょう。

  1. 物理: 62.36
  2. 化学: 57.59
  3. 生物: 72.64
  4. 地学: 46.65

これは得点調整後の値(出典)ですので、地学の点数がよっぽど低かったのではないかと思うかもしれません。

しかしテスト後に発表された得点調整のお知らせを見てみると…

理科②の「地学」は、受験者数が1万人未満のため、得点調整の対象としません。

えっ?

_人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 理科②の「地学」は、     <
> 受験者数が1万人未満のため、 <
> 得点調整の対象としません。  <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

…うーん。

先程の得点の出典には受験した人数も書かれていたので見てみましょう。

  1. 物理: 146,041
  2. 化学: 182,359
  3. 生物: 57,878
  4. 地学: 1,356

…なんというか逆数を取りたくなってくるほど少ないですね。では、どうしてここまで地学を(少なくとも大学入試で)学んでいる人は少ないのでしょうか。

どうしてこんなに少ないんですか?

初めに言えることとしては、高等学校の過程の「地学」を学べる、さらに言えば「地学基礎」を学べる高校がとても少ないことが挙げられます。

日本地学教育学会という、名前の通り日本の地学教育についての学会が存在します。この学会のウェブサイトには「地学を学べる高等学校一覧」というページがあるので見てみましょう。

見ましたか?

…そうです。すっからかんなのです。一応大都市圏にある程度まとまって存在することと、地方の高校でも教えているところはある、といった状況です。しかもその中の多くが地学基礎で終わってしまっています。そのため、基礎無しの地学を学べる高校というのは実は日本において希少であるとも言えます。

また、文系/理系という日本に根強く残る謎の考え方がありますが、入試が近づくと「文系は理科①の生物基礎と地学基礎!!!」と声高に叫ばれているのも、この傾向に拍車をかけている、すなわちセンター試験/共通テストを突破するためだけにある謎の科目という扱いを受けている、といえるでしょう。

参考書も少ない

地学を学べる高校が少ないとなると、次の選択としては「自習」が考えられます。個人的には北海道大学の「地球惑星科学入門(ISBN: 978-4-8329-8219-2)」が教科書としておすすめですが、500ページ近くもあるため初学者にとっては重すぎます。そのため、多くの人は「ひとりで学べる地学(ISBN: 978-4-389-20139-5)」を手に取るかと思います。これが良書であるのは言うまでもないですが、裏を返せばこれくらいしかきちんと学べる参考書がないとも言えます。もちろん地学基礎を学ぶ本は多数ありますが、それは明らかにセンター試験/共通テストを突破することだけを考えているものが多く、それらの本の量は、物化生の3科目に遠く及びません。

高校で採択されている検定教科書を用いるという選択肢もあります。しかしこれも難しいといえるでしょう。文部科学省は検定に通過した教科書を毎年公開していますが、それの令和4年度版を見てみましょう。目次を見るとわかる通り、地学基礎と地学はどちらも1ページにまとまっています。さらに基礎無し地学に関しては啓林館から出版されているものしかありません。このように、検定教科書を非常に限られています。

また、図録/資料集も非常に少なく、数研出版から出ている「フォトサイエンス地学図録」と浜島書店から出ている「ニューステージ新地学図表」、第一学習社から出ている「スクエア最新図説地学」のほぼ3択です。問題集に至っては啓林館の「センサー地学」が終わったらセンター試験赤本、といった感じです。

そのため、参考になる資料がものすごく少ないといえるでしょう。

それでも面白いんですよね、地学。

以上に述べた通り、地学を取り巻く環境は劣悪であるといわざるを得ません。しかし母国語で地学を学べる環境がこの劣悪な中でも維持されていること自体は大変な幸運であるといえるのではないでしょうか。

大変な中でも日本では様々な主として国立大学が地球科学の様々な分野の研究を行っています。そして私たちが住むこの弧状列島の姿、海の多様な姿、空からの恵みの仕組み、この星の大循環、星々の進化などを明らかにしてきました。それは地球科学が面白い学問であるから、というのが一つの理由だと思います。

最後に

頭を上下させてみてください。天に見上げる星から足元の遠く下にある地球の核までを統括的に考えてみる地球科学。長々とした駄文でしたが、少しは興味を持っていただけたでしょうか。あなたが地学徒となる日をお待ちしています。

次の地球科学関連の記事: 高校の「地学」はめちゃくちゃ広い

Writer

Osumi Akari

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