中核派全学連とは、革命的共産主義者同盟全国委員会(通称・中核派)に関連する全日本学生自治会総連合(全学連)です。このような書き方をしていることには理由があり、日本の新左翼、すなわち1950年代に既にあった左翼党派である共産党・社会党にある種対峙して形成された新左翼が分裂を繰り返したことに伴って(互いに正当性を主張する)同名の組織が多数形成されたのが理由となっています。
さて、この中核派は「前進」という週刊の機関紙を発行しており、これを紹介するためとして2017年から「 前進チャンネル 」と題したYouTubeチャンネルを運営していました。このチャンネルはインターナショナルのシグナルから始まり、チャンネル登録・高評価に加えて前進の定期購読をお願いする日本で唯一と思われるYouTubeチャンネルでしたが、遅くとも 9月8日まで自ら削除されてしまいました 。この記事ではその顛末を公開情報を基にまとめていきたいと思います。
結論
- 遅くとも9月8日にYouTubeチャンネル「前進チャンネル」が削除
- 9月11日に前進チャンネルへの出演が多かった石田真弓氏が中核派から除名されたことが判明
- 9月11日から中核派全学連の全国大会が行われるタイミングでの削除
前進チャンネル
チャンネルが削除されてしまった現在、前進チャンネルがどういったチャンネルであったかどうかを説明することは困難を極めます。強いて言うなら「中核派の機関紙『前進』を映像付きでテンポよく紹介するチャンネル」といったところでしょうか。基本的に「前進」の発刊に合わせた週一回のペースで更新され、「インターナショナルを用いたオープニング→直近の事柄をネタとしたフリートーク→『今週の前進』→(あれば)告知→チャンネル登録・高評価・(紙の)前進の定期購読のお願い」といった数分の動画をアップロードしていました。
埋め込みが出来なかったのでリンクで失礼しますが「ヘルメット」のメイキング動画などのショート動画もアップロードし、どのような闘争を行っているのかの内情をある程度紹介しようとしていたのではないかと思われます。しかしながら、2025年9月8日、そのような前進チャンネルが見れなくなってしまいました。
あれ?前進チャンネルのYouTubeアカウント消えてる?
— ねあ / NY (@n__n__s) September 7, 2025
前進チャンネル消えた。。?
— 🔻 (@ItoRisei) September 7, 2025
前進チャンネルガチで消えてますやん
— フリーレン (@Hackyou_Shiteta) September 7, 2025
これを以って直接確認しに行くと、確かにチャンネルが削除されてしまっています。
当初はYouTubeに何らかの規約違反として削除された可能性があったものの、様々な根拠から前進チャンネルが自らチャンネルを削除したという線が濃厚となっていました。同時に突然の方針転換に関して困惑が広まっていきました。
前進チャンネルのYoutuberリンクを踏むと、「Youtubeアカウントを削除したため」と表示されるんで、自分で消したんじゃないでしょうか。BANなら、「Youtubeアカウントが停止したため」と出るはず https://t.co/ZAH8YjUB1w pic.twitter.com/dXp1kMm5sX
— S (@sdjkiy365) September 10, 2025
この削除が行われたタイミングというものも重要で、9月11日から12日にかけて「全学連第86回定期全国大会」が行われるという極めて重要なタイミングでした。通常は「学生はみんなおいで!」といった感じの宣伝が行われるのに、その真反対の出来事が起こっています。そのため徐々に不安が高まってきました。
35全総
9月11日に「前進」のサブサイト扱いである「ZNN」において、9月初めに第35回革共同全国委員会総会が開催されたことと石田真弓氏が中核派を除名されたことが判明しました。かなり革共同らしい文章であるため取っ掛かりにくいところがありますが、女性に関する問題によって石田氏が除名されたことです。新左翼党派内ではこういった女性絡みの問題が度々発生している(全くもっていいこととは思いませんが)ことがあり、それだけであれば(残念ですが)意外性はあまりないと言えるでしょう。
ただ、ややこしいことにその問題の告発者と石田氏が同調した上で「女性差別者集団と成り果てた現政治局を徹底弾劾し打倒する決意表明および要求(案)」という文書を作成し、中核派に認めてもらおうとしたという点が挙げられます。詳細についてはZNNに掲載されている文章を読んでいただきたいのですが、問題の所在について色々揉めたような形に見えます。
石田氏は前進チャンネルへ積極的に出演しており、直近ですと8月末の動画に出演していたことが確認できます。
「LINEスタンプを認めろ」前進チャンネル第271回https://t.co/hAHfGxDw50 pic.twitter.com/qLFh4JsNIQ
— 矢嶋尋(全学連委員長) (@toshobin) August 30, 2025
このため、前進チャンネルの削除と石田氏の除名がリンクしていると考えるのが自然であると考えられます。石田氏は前進チャンネルの作成時(2017年)から明確なイニシアチブを持っていたとは思えないものの、回数を重ねるにつれて前進チャンネルの方針に影響を及ぼせるようになったと考えられます。真偽は不明であるものの「中核派の内部」からの情報として以下のものがあり、前進チャンネルと石田氏の関係性をうかがい知ることが出来るようになっています。
中核派分裂騒ぎ、内部から聞いた話を整理してみた…
— Maximilien Limon (@0142_limonka) September 11, 2025
今後石田氏サイドから明瞭な声明が出るかどうかは不明ですが、今後ともこの事態は続きそうです。
最後に
この事態そのものを直接記録している人々がいないようでしたので、2020年代の現在では極めて稀であったいわゆる過激派による積極的な動画の投稿があったということくらいは記録に残しておこうと思いこの記事を書きました。また、記事の内容に誤り等がありましたらその旨をご教示いただけますと幸いです。ソースが限られてしまっている関係上満足できる内容となっていないことをご承知おきいただけますと幸いです。
なお、このサイトを長らく見てくださっている方はなんとなく分かってくださるかと思いますが、一応私の思想と中核派(というより大半のマルクス主義を主張する集団)は相容れない関係にあります。個人的には自由主義的経済学が一番近いという時点で、そこまで思想的には近くないということを理解してくださるかと思います。そのため当然ながら中核派とその関係者に関して一切縁はありませんし、今後とも構築するつもりはありません。
それでも前進チャンネルをある程度見ていた理由ということに関してですが、前進チャンネルが広まった時期はちょうど「インターネット選挙」に関する議論が高まった時期に相当します。中核派が直接候補を立てることこそありませんでした(候補に対して支援があった選挙はありましたが)し、コメントを見る限り大衆を大きく動かすほど賛同を得られていたとは思いませんが、それでも自らの主張を一週間に1回は数万人の視聴者に伝えられているというのは、(少なくとも定期的に見始めた2020年頃においては)将来やがて来るであろう「ネット選挙」時代において大いに参考とされるであろうと感じたことが、前進チャンネルを継続的に見始めた理由として挙げられるでしょう。
今後前進チャンネルがどうなるかどうかは不明ですが、はっきり言って復活は難しいものとなっていようかと思います。Internet Archiveにもあまり動画が残っていないので、前進チャンネルのようなものを見られなくなってしまうのは悲しいですが、今後の様子を完全なる外野から見守っていければいいなと思っています。