イエメン沖のアデン湾は、海賊行為や攻撃行為が多数発生し、航海の上で大変危険な地帯として知られています。最近ではイスラエルのガザ侵攻に対する支援として、イエメンに拠点を置く武装集団であるフーシ派による攻撃が複数回発生していました。
このアデン湾地域で、10月18日にカメルーン国籍のタンカー「Falcon」が攻撃を受けたとイギリス軍が発表しました。この記事ではその概要を記していきます。
結論
- 何らかの発射物を受けカメルーン国籍のタンカー「Falcon」が炎上
- 船員は退避のための準備を行っており、26人の乗組員中少なくとも1人が行方不明
- 攻撃者は不明だが、フーシ派による攻撃は10月10日以降見られていない
タンカーが炎上
AP通信やロイターによると、10月18日にアデンの東およそ210kmのアデン湾において、カメルーン国籍のタンカーが炎上したとイギリス軍やアンブレイが発表したとされています。イギリス軍はこの地域において航行の安全に関する情報を収集しており、海上警備会社アンブレイ(Ambrey)はその顧客に対してリスク情報を配信しています。
この記事の公開時点においては、イギリス軍がこのような航行の安全に関わる事案等を公開しているUKMTO(United Kingdom Maritime Trade Operations)のサイト上で直接確認することは出来ていません。ただ、複数のメディアが同一内容を報じているため、信頼性があると判断し掲載を行いました。
AP通信やアルジャジーラによると、この炎上したタンカーはカメルーン国籍のタンカー「Falcon」である可能性が高いとのことです。この「Falcon」はオマーンからジブチへ向かう最中において攻撃を受けたとのことです。MarineTraffic上で確認すると、この船舶の位置は「アデンの東およそ210kmのアデン湾」という情報に符合します。
無線によれば、乗組員は船を放棄する準備を進めているとのことです。その周囲には多数の船舶の存在がMarineTraffic上で見られ、救難作業が行われる可能性が高いと思われます。
10月18日23時40分追記: EUが行っているアスピデス作戦のWebサイトによれば、作戦に参加しているギリシャ軍やフランス軍等が26人の乗組員(ウクライナ人1人、インド人25人)の救出を現状行っているとのことです。この記事が投稿された日本時間23時07分現在、24名が既に救助されているとのことですが、少なくとも1人が行方不明となっているとのことです。「Falcon」はLNGを積載しているため救出は難航する可能性がありましたが、現状としては迅速に救助が進行していると言えるでしょう。
攻撃者
現在の時点でこれに関する犯行声明は特に出ていないようです。攻撃を受けた地点を考えるとフーシ派による攻撃をまず想定しますが、フーシ派はあくまでガザ侵攻に対する「支援」として襲撃を行っていたため、一応は休戦が成立している10月18日現在で考えると、これも難しいと言えます。
また、AP通信によるとこの「Falcon」はいわゆる「影の船団」としてイランの石油製品を輸送していたことが知られています。アルジャジーラによれば海上警備会社アンブレイもフーシ派による攻撃と考えていないとしています。
このため、現在船を放棄せざるを得ないほどの火災を発生させた攻撃者は不明となっています。
関連リンク
- 英軍によると、イエメン沖のアデン湾で被弾した船が炎上したという。 - ARAB NEWS
- British military says ship ablaze after being struck off the coast of Yemen in the Gulf of Aden - AP News
- Cameroon-flagged tanker issued distress call off Yemen’s Ahwar, security firm says - Reuters
- UK military says ship ablaze after being struck off coast of Yemen - Al Jazeera
最後に
まだ日本語の記事がARAB NEWSを除き無いようなので作成してみました。現状被害の詳細が不明なため、最新情報はこの記事に依拠することなく再度確認することをおすすめします。
基本的に情報源はイギリス軍とアンブレイに大きく依ってしまっています。ただ、現状これ以上の情報源を探すことが出来ませんでしたので、一旦この状況で公開することとしました。
10月19日追記: イエメン沖で炎上しているタンカーの発火原因は飛翔体ではない可能性で情報の更新を行いました。こちらも合わせてご覧ください。