NOSAI茨西の相次ぐ不祥事はガバナンス不全が原因と第三者委員会が指摘、いわき信組問題の再来か

理事長・役員・幹部職員に対する不自然な共済金支給や役員改選での妨害行為、監督行政庁への報告書を偽造などを長期間にわたり実行した疑い / 2026年07月11日

2024年頃から発覚し始めた茨城県西農業共済組合(NOSAI茨西)の不祥事について、初めは一部の職員による架空の共済金請求事案であると考えられており、組織ぐるみでの不正が行われたとは言い難いものでした。しかしながら、調査が進むにつれて組織全体における不正が蔓延しており、その多くは執行部に関係している様子が明らかとなってきました。

この記事では2026年6月30日に公開された第三者委員会報告書Internet Archive)を基に、NOSAI茨西の相次ぐ不祥事に関して簡単にまとめていきたいと思います。第三者委員会の報告書は150ページを超えるものであり、かつ内部の文字が画像化されておりますのでページ内検索などが難しくなってしまっているものではありますが、深刻なガバナンス不全と不正に関する記録が及び厳しい指摘がなされており、一読の価値はあります。この記事を報告書を読むためのフックとして活用していただければ幸いです。

結論

  1. 組合長やその家族が異常な高頻度で共済金を受け取っていた可能性や職員の不正を隠蔽した疑惑
  2. 2025年の理事改選にあたって、組合長に異を唱えた理事に対する落選工作の疑惑も
  3. 監督行政庁(都道府県)に対する報告書に全面的な捏造の可能性、4年前に死亡した人からの聞き取りや少なくとも十数人の証言が警察記録と食い違うなど

農業共済とは

今回問題となっている茨城県西農業共済組合(NOSAI茨西)の不祥事を理解するためには、農業共済制度についてある程度の理解を行うことが大切です。「農業共済」というワードを聞いた際に思いつくのは、農業協同組合(JA)が行う「JA共済」が思いつくかと思います。しかしながら、JA共済は農業協同組合法に基づいて農協が行う共済事業ではありますが、その共済の対象としているものは、病気・火災・事故などに対するものであって、農家に特有の台風などの自然災害や病害虫による農作物等への被害を補償するものではありません。

これらに関する補償を行っているのが「 農業共済 」です。農業共済は農業保険法に基づく事業であり、基本的には(一部の種別を除いて)半額程度の掛け金は加入者である農家が払うものの、もう半分は国費から支弁されているもので、 国による農業政策の1つ として行われています。災害などによって農作物等の販売が出来なくなるなどによる収入の減少を補っている「制度共済」の他、「任意共済」と呼ばれる建物や農機具等の損失を補うための共済(任意共済の掛け金には国費支弁なし)も用意されています。この農業共済は全国各地に所在する組合等が行っており、その組合等が都道府県レベルの連合会等に再共済関係を、制度共済に関しては政府との再々保険・任意共済に関しては全国農業共済組合連合会(NOSAI全国連)が再々保険を行う形で、強固な仕組みが形成されています。

これと並立して「 収入保険 (農業経営収入保険)」というものも全国各地の組合等を窓口として行われています。農業共済は共済金そのものは手厚いものの、対象となる品目が指定されている他「災害など」というように共済金が下りる条件が限定的であるという問題を抱えています。「収入保険」は品目などに関わらず、価格低下なども含めて農家の販売収入が減少した際に支払いが行われるものであり、より包括的なものとなっています。農家は自身の選択によって、農業共済と収入保険のいずれかを選択して加入します。

先にも述べた通り、収入保険自体は全国各地の組合等ではなくNOSAI全国連が行っており、農家は全国各地の組合等を通して加入するものとなっていますが、農家から見た際には大きく変わるものではありません。この収入保険にも保険料等に関して国庫補助が行われることとなっており、農業共済と同じように組からの支援が行われるものとなっています。NOSAI全国連は政府と相手方とした再保険を行っており、この強固な仕組み自体は農業共済と類似したものとなっています。

また、「 損害防止事業 」と称して、そもそも共済の支払い理由となる損害の防止・軽減のためとして、農薬散布や重機の貸し出しを行っています。これらは各地の農業共済等を扱う組合等がそれぞれの事情に合わせて行っています。

すなわち農業共済組合(NOSAI)は、(本来的な)農業共済の運営・収入保険の窓口業務・損害防止事業の実施などを組み合わせて、農家の安定を強力にサポートする組織であると言えます。これらは農家の相互扶助をベースとしつつも政府・自治体によるサポートとセットになって行われているため、基本的には都道府県を監督行政庁として活動のチェックが行われています。

組合長が異常な頻度で共済金を受け取る

農業共済は通常の保険と同様、何かしらの損害が発生した際にそれを理由として共済金を受け取るのは普通のことですし、それが例え執行部や幹部職員であったとしてもその被害を受けていることが確かであれば問題とはならない行為です。しかしながら、それがあまりに高頻度での受け取りであれば、適切に被害認定が行われていたのかなども含めて疑念を持たれても仕方のない行為です。

NOSAI茨西の管轄範囲内において、2006年度~2024年度の19年間で建物共済の共済金を一度でも受け取っている人は加入者70342人に対し8410人(約12%)で、1人当たりの平均受け取り回数はおよそ1.35回であるとのことで、1回しか受け取ったことのない人は78.0%に及んでいます。落雷による受け取りに限定すると5632人(約8%)で1人当たりの平均受け取り回数はおよそ1.24回、1回しか受け取ったことのない人は83.1%にのぼるとされています(報告書80ページ~87ページ)。

NOSAI茨西の組合長による落雷を理由とした建物共済の受け取り回数と周辺の一般組合員との比較。組合長とその親族が突出している。

組合長は同期間において建物共済の共済金を親族と明らかとなっている名義と合わせて40回は受け取っていることが判明しています(さらに親族とみられる申請が8回あるが、本当に親族であるかは不明であるため報告書では除外)。組合長が主に所有する建物が所在する桜川市真壁町の加入者の平均受け取り回数である1.22回と比較しても 極めて多い共済金の受け取り であることが指摘されています。このうち落雷を理由とした共済金の受け取りは27回であり、組合長が所属する小地区による落雷を理由とした受け取りの93%を占めていることになります。

落雷による被害というのは、確かに雷雨が発生したとしてもその地域の全ての建物に被害が及ぶというわけではなく、少数の建物のみ被害が発生するという状況というのは存在しえます。雨風や雹による被害であれば、当該地域に広く被害は発生しますが、雷であればそれが落ちた場所にのみ集中して被害が発生するためです。とはいえ、19年間で1回でも建物共済の共済金を受け取るのが稀であり、さらに2回以上受け取った人はさらに少数であることを検討すると、不自然であると言わざるを得ません。

これに関して組合長自身は、保有する建物は賃貸住宅なども含めて合わせて50戸程度存在しており、それぞれの事案に対して賃借人に共済金の請求を行わせていたため結果的に支払い件数が多くなってしまったが、不正の意図はないという旨の弁明を第三者委員会のヒアリングに対して行っています。

しかしながら、この弁明は実際のデータから見ると疑わしいものです。まず、特定の建物にのみ落雷による共済金支払いの申請が集中していることも指摘されています。 19年間の間に特定の建物4棟について合わせて18回の落雷による申請 が行われており、このうち2棟は同一敷地内にある個人の住居・和風建築物、残りの2棟は敷地的には隣接していないものの店舗であるとしており、 賃貸住宅ではありません 。この他、数百メートル離れた組合長の建物とその親族の建物が同一時刻に落雷による被害があったとしたり、直線距離で10km程度離れた桜川市真壁と桜川市富士見台の組合長が所有する建物に対して同一時刻に落雷による被害があったとしたりしたことが判明しています。

また、落雷に限らず様々な自然災害により毎年のように被害が発生していたとしており、少なくともデータが残る2006年度~2024年度の19年間で親族も含めて40回の建物共済の申請が行われていたことが判明しています。ところが、2021年以降は一切の申請が行われておらず、このような多数の「被害発生」を説明するためには土地の形質や周囲環境の影響を考慮する必要があることを鑑みると不自然である旨の指摘を行っています。

一部役員・職員にも異常な頻度の受け取りが

第三者委員会は、組合長個人の共済金受領に見られた不自然さが組合長という個人に限られた問題なのか、それとも組織全体に及ぶものなのかを確認するため、組合長以外の役員・職員・総代についても同様の手法(一般的な建物共済加入者との受領回数・頻度の比較)で調査を行いました。役員・職員・総代については各在任名簿と照合できた2012年度~2024年度の13年間を基準としています(報告書89ページ~94ページ)。

前提となる数値を確認しておくと、この13年間において建物共済の共済金を受領した者の割合は、茨城県全体で約7.0%、NOSAI茨西の区域に限っても約9.7%であり、受領者1人当たりの平均受領回数はそれぞれ約1.27回・約1.30回でした。1回のみの受領で終わった者が県全体で約82%・区域内で約80.6%を占めており、裏を返せば 2回以上受領している者は県全体でわずか約1.3%、区域内でも約1.9% にすぎません。さらに3回以上となると区域内で約0.54%、5回以上に至っては約0.08%という希少さです(報告書90ページ)。

役員について、退任者を含む81人のうち27人(約33.3%)がこの期間に共済金を受領しており、これは県全体の受領者割合の約4.8倍(区域内比較でも約3.4倍)に上ります。そのうち3回以上の受領者は、7回が1人、6回が1人、4回が3人、3回が3人の計8人(役員の約9.9%)で、区域内の一般加入者における3回以上受領者割合の 約18.3倍 となります。5回以上に限っても2人(約2.5%)おり、区域内一般加入者の約31.3倍です。落雷被害に限定すると、20人(約24.7%)が受領しており県全体の約6.5倍、うち2回以上落雷被害で受領した者が11人(約13.6%)と、区域内一般加入者の落雷2回以上受領割合約0.9%(100人に1人未満)を大きく上回っていました。

もっとも、報告書は 役員全体を一律に問題視しているわけではありません 。81人中54人(約66.7%)は一度も受領しておらず、受領歴のある役員でも14人は1回のみであったことから、1回以下の受領者が約84.0%を占めると指摘しています。すなわち、役員全体として見れば受領者割合こそ高いものの、その多くは通常の共済事故によるものとみられ、問題は 特定少数への集中 にあることが読み取れます。なお、農機具共済についても現役員17名中13名が2001年度~2024年度の24年間に合計4168万3182円を受領していたとの情報提供があったものの、こちらは実態調査まではしておらず、直ちに問題であると断じてはいません(報告書92ページ~93ページ)。

職員についても同様の傾向が見られます(報告書93ページ)。不正請求を理由に解雇された5人を除く在籍職員117人のうち42人(約35.9%)が受領しており、県全体の約5.13倍(区域内の約3.7倍)です。3回以上の受領者は5人(約4.3%)で区域内一般加入者の約8倍です。

とりわけ、この期間に職員最高位である参事を務めた5人のうち2人が3回以上受領しており、うち1人は6回受領(5回以上受領者)でした。落雷被害でも25人(約21.4%)が受領し、複数回の者5人のうち2人が参事経験者です。3回以上又は落雷で2回以上受領していた職員のうち参事経験者2名を含む3名は、後述の新規不祥事案でも共済金を受領しており、これらは当委員会の調査開始後の2025年12月12日に返還されています。職員についても75人(約64.1%)が一度も受領しておらず、1回以下の受領者が約83.8%を占める点は役員と共通しています。

総代については、2012年度~2024年度に役員として計上した者を除く総代となった者のうち14人が3回以上受領しており、中には10回(2006年度~2024年度の19年間で見れば12回)受領していた総代も存在しました(報告書94ページ)。 組合の意思決定機関である総代会の構成員にもこうした受領者が含まれていた こととなります。

委員会はこれらについても犯罪行為であるとの認定はしていませんが、区域内の建物共済加入者のうち1%にも満たない多数回受領者の中に、調査対象期間の参事経験者5人中3人、現職の部次長・課長各1人が含まれ、しかも現在も在職している参事経験者3名を含むこれら5人がいずれも現在の組合運営に深く関わっていることを、 ガバナンス上極めて深刻な問題 と評しています(報告書97ページ~98ページ)。ほとんど共済金を受領したことのない大多数の加入者が払い続けた掛金を原資として、執行部が優遇する特定少数の者だけが繰り返し利得しているという、第三者委員会が「正直者が馬鹿を見る」と表現するこの構図は、現在の役員・幹部職員に対する組合員の信任を失わせるに十分なものであると結論付けています。

組合長に「抗った」理事に対して落選工作の疑い

このような不祥事が発生していたNOSAI茨西ですが、組合内においてこの不正を指摘する声が無かったわけではありません。しかし、そのような声も組合執行部によって封殺されてきた様子が確認されています。

まず理事会での「口封じ」です。2023年9月30日付けの消印で、組合長ら(大山組合長とその親族)による極めて不自然な建物共済の受領歴一覧表を添えた内部告発文書が、役員をはじめ広く関係者に郵送されました。第三者委員会が組合が保管する資料と確認したところ、被害日時の誤記2か所等を除き 一覧表の内容はほぼ正確 でした(報告書104ページ~105ページ)。

ところが、2023年10月20日の緊急理事会でこの文書について理事の1人が質問した際、回答に当たった総務部長A15は、 内容が真実であることを容易に確認できる立場にありながらこれを「怪文書」と決めつけ 、顧問弁護士の名を借りて「個人情報が含まれるため口外すれば犯罪になりかねない」旨答弁し、説明を回避しました。委員会はこれを「口封じのための侗喝」としか評価できないとし、むしろ理事の正当な行為を妨害する刑法233条の偽計業務妨害罪に問われてもしかるべき事案とまで踏み込んでいます(報告書105ページ、146ページ脚注26)。本来ここで組合長の不自然な受領が明らかになり組合員が説明を求められたはずが、A15の発言によりそれができなくなった、と委員会は指摘します。

次に役員改選での「一掃」です。2024年12月11日の第12回理事会で大山組合長の解任動議が提出されましたが、これに賛成した理事である「解任賛成理事」7名は、2025年2月~3月の役員改選で いずれも再選されず、逆に賛成しなかった理事は全員再選されました (報告書98ページ~99ページ)。組合長以外は非常勤で報酬も多額ではない役員に就任希望者がそれほど多いとは考えにくく、これまで再選を重ねてきた解任賛成理事が対立候補との争いを経験したこともなかったことに照らすと、解任賛成理事のみが再選されないという結果自体が極めて不自然だとされました。

第三者委員会が関係者からのヒアリング等で得た情報によれば、約20年にわたり無投票で理事が選出されてきた「無風地区」も含め、解任賛成理事が選出されていた各地区では次のような事象が生じていました(報告書99ページ~100ページ)。

  • 甲の地区 : 選出理事の定数が削減されたので理事になれないと一方的に通告され、その後の経緯も知らされないまま、同時に選出されていた別の候補が単独で地区代表に選ばれた。
  • 乙の地区 : 組合長の政策を支持する当時の代表監事から「自分が理事になるから立候補を取り止めろ」「あなたが理事だとダメだから」と強く立候補断念を迫られ、乙は拒否したものの当該前代表監事がそのまま理事に選出された。
  • 丙の地区 : 候補者を推薦する総代の集会日程が教示されず、丙は立候補表明も挨拶もできないうちに別の者が理事に選出された。
  • 丁の地区 : 選挙数日前に当初の対立候補が逝去したにもかかわらず、選挙直前に急遽立候補した別の対立候補がそのまま理事に選出された。
  • 戊の地区 : より総代数の多い他地区と合併して1人の理事を選出することとなった結果、数に勝る他地区の候補が選出された。

委員会はさらに、2025年度に役員候補を選出した全地区の地区代表(役員推薦会議に出席した総代14名)へのヒアリングを試みました。一度は全員が2026年5月18日の応諾を回答したものの、期日直前の5月14日になって 14名中5名が応じられなくなり、結果として問題のあるイ・ウ・エの各地区ほど実態解明ができない という展開になりました(報告書100ページ~101ページ)。ただ、乙の地区の現・代表監事からは、前任者に「自分は今度理事になるから、あなたが後任の監事をやってほしい」と言われて監事を引き受けたとの供述が得られ、総代による被推薦者決定の前に理事・監事が事実上決まっていたことがうかがわれました。

また、各地区の役員・総代の定員配分の変更についても、解任賛成理事の選出母体を、より総代数の多い地区と合区することで推薦票を不足させたのではないかとの疑いが指摘されています。この配分変更は2024年5月の理事会・通常総代会で定款変更として可決されており手続きそのものに問題はなかったものの、地区の利害に大きく影響する事項であるのに質問すら出ず可決され、役員推薦会議に出席するほどの総代でさえ自地区の定員変更を組合からの通知で知ったと述べていることから、提案者側が十分な説明を尽くしたのか疑問が残る、とされました(報告書101ページ)。

もっとも、肝心の地区の地区代表が直前にヒアリングを拒否したため、この落選工作疑惑は 「疑惑のまま終了」 せざるを得ませんでした(報告書101ページ~102ページ)。とはいえ、組合員の総意に基づく自治という農業共済団体の根幹に関わる問題であり、委員会は、新たな役員選出に当たっては定員配分も含め外部から検証可能な透明性のある手続を定めるよう求めています。

茨城県の調査を妨害

そしてNOSAI茨西をめぐる一連の不祥事の調査は、2023年に連合会に対してなされた公益通報を契機としています。ところが同組合は、2023年12月15日に連合会から損害評価写真の流用を指摘されていながら、監督行政庁である茨城県への通報を常例検査直前の2024年1月11日まで行いませんでした。委員会は、後述の虚偽報告の事実も踏まえれば、「同組合が連合会からの指摘後も不祥事を隠蔽しようと試み、常例検査に間に合わずやむなく直前に報告したと疑われてもやむを得ない」と指摘しています(報告書106ページ)。

2024年1月の常例検査で損害評価写真を流用した損害評価書の作成が確認され、同月31日付けで茨城県から報告徴求命令(農経第1380号)が発出されて本格的な調査が始まりました。しかし同組合の対応は不誠実で、2024年2月27日付け回答書(実際の提出は監事意見書の認証がなされた2月29日とみられる)を提出するも約1週間後に不備を指摘され、3月7日付け命令で追加調査を命じられ、さらに3月29日付け・6月3日付け・7月31日付けと 再々度・再々々度・再々々々度にわたる報告徴求命令 が繰り返される事態となりました。しかも後の命令ほど、単なる調査不備ではなく報告内容の「矛盾」を指摘する内容へと変わっていきました。委員会が刑事公判記録や連合会の調査結果と照合したところ、2024年2月27日付け・3月14日付けの各回答書による報告は 全体として明らかな虚偽であり、農業保険法第228条の虚偽報告罪に該当する と認定されました(報告書106ページ~107ページ)。

2月27日付け回答書では、建物共済加入者52名について「過去の落雷で電化製品が壊れ組合に連絡したことの確認」「組合職員が事故確認で訪問しているかの確認」「共済金を受け取ったことの確認」の3点を聞き取ったとされ、一覧表にまとめられていました。このうち本件不祥事案で名義を利用された者と重複する15名について警察官による調書と対比した結果、 15名全員について組合の調査結果が警察への供述と全く異なっていた ことが判明します。組合の調査では「他市町へ転出」「記憶にない」等を除きすべて「問題なし」とされていたのに対し、警察に対しては全員が落雷による共済金支払いを受けた事実はないと供述していたのです(報告書107ページ~108ページ)。

大きな問題としては 2024年2月14日15時にA12が聞き取り調査を行い「問題なし」と回答したことになっているX1が、その調査日時の3年半以上前である2020年9月にすでに死亡していた という事実です。また「転居」で調査不能とされていたX2は、同じく調査対象のX3の妻であり、X3が妻の分と合わせて名義・口座を職員に利用させていたことが判明したため、X3への聞き取りで「問題なし」とした報告も、X2が「転居」で調査不能とした報告も、いずれも虚偽であることが明らかになりました。

残る12名についても、実際に県外へ転居しており建物共済加入者ですらなかったX4を除き、「これまで建物共済等の請求をしたことは一切ない」(6名)、「落雷により請求をした事実は一切ない」(2名)、「職員に頼まれて名義を貸し、口座に振り込まれた金は全て職員に渡した」(X15)、「勧められるまま2度請求したが、80万円近い大金が振り込まれて怖くなり全額返還して請求を取り下げた」(X16)などと供述しており、実際に聞き取りをしていれば「問題なし」との結論に至りようがないものでした。委員会は、これらが誤記や勘違いの範疇を大きく超えるとして、 意図的に調査対象者の虚偽の回答を作出(捏造)したものと断じざるを得ない と結論づけています(報告書108ページ)。対比できたのは15名のみですが、そのほぼ全員で捏造が確認されたことから、残る37名についても同様と強く推察されるとしています。

損害証明書の発行業者に対する調査結果も同様でした。たとえば発行業者Y10については「証明書を普通に出しているのに疑っているのかとお叱りを受けた」と報告されていますが、実際には営業主が2023年に死亡し、2020年頃からほとんど稼働していない業者でした。また業者Y9の代表者は、自社は工場等を対象とした電気設備業で個人宅の損害証明など出したことは一度もなく、証明書の社判は偽造されたものだとして「勝手に印鑑を作られ、社名まで使われた被害者だ」と憤っています(報告書111ページ~113ページ)。これらについても委員会捏造と判断しました。

これらの虚偽報告について、事務職の最高位である中島参事は、「これらの報告は本件不祥事案が発覚する前の調査結果であり、不正の実行者らを調査に同行させてしまったために調査担当者が騙されて『問題なし』とされたもので、発覚後に再調査して監督行政庁・連合会に報告済みである」旨説明しました(報告書116ページ)。しかし委員会が監督行政庁・連合会に照会したところ、 報告を訂正する再調査報告はいずれに対しても行われていなかった ことが判明します。加えて、名義を借用した実行者らは自己の担当地区の加入者しか把握しておらず、52名の加入者・29もの業者に及ぶ捏造を組織上層部に気づかれず妨害工作で成功させることは考え難いことなどから、委員会は、この説明は監督行政庁から矛盾を追及された組合が、既に解雇され事実確認が困難な実行者らに 責任転嫁 しようとしたものではないかと強く疑っています(報告書118ページ~120ページ)。

そして委員会は、これらのねつ造がA13・A24・A27・A7・A12・A25といった 管理職の立場にある者の名義で行われており、組合が組織を挙げて虚偽報告を行っていた可能性が極めて高い と指摘します。監督行政庁の命令を正面から無視し、あたかも調査したかのように装ってねつ造した結果で行政庁を欺き、その後の監督措置を誤らせようとするこの隠蔽工作を、農業保険法が定める監督制度の根幹を揺るがす 「質的に見ればこれを超えるような悪質な事例は想定しづらい」 ほど悪質なものと評価しました(報告書121ページ~122ページ)。

委員会は監督行政庁に対し、2月27日付け・3月14日付け各回答書による虚偽報告について直ちに刑事告発するよう勧告しています。この点は時間的にも切迫しており、2月27日付け報告の公訴時効は遅くとも2027年2月28日の経過をもって、3月14日付け報告は2027年3月13日の経過をもって完成するため、監督行政庁が 報告徴求命令を繰り返しているだけでは時効が完成してしまうおそれが高いと注意喚起 がなされています(報告書121ページ、147ページ脚注29)。

関連リンク

最後に

時期的にも2024年に発覚したいわき信用組合の不祥事を想起させる不祥事です。いわき信用組合は240億円以上の規模であり、今回のNOSAI茨西は1桁億円~十数億円程度でしょうから規模の面では小さい問題であるとは言えます。しかしながら、ガバナンスの不全という観点から見た場合、 いわき信用組合の問題を超える と考えています。

組合長による私物化と称されてもしょうがない行為や調査に対する組織的な妨害行為そのものはいわき信用組合でも見られたものですが、理事の選挙における広範な妨害行為にまで至るのは、異なる次元に至っていると言わざるを得ないでしょう。第三者委員会の報告書が言うように、自浄作用はもはや期待できないというのもその通りだと考えていますので、加入者である善意の農家や国費の元となっている国民に対して納得のできるような処理が監督行政庁たる茨城県などにより粛々と進められて欲しいと考えています。

Writer

Osumi Akari

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