そそり立つトアとボルンハルト

エッチな地形シリーズ(誤解を招かない説明) / 2022-10-08T00:00:00.000Z

エッチ地形(etch forms)という言葉がかつて使われていました。この場合の「エッチ」というのはdirtyな意味のものではなく差別侵食を意味します。つまり「エッチ地形」は差別侵食によって形成された地形を指す言葉というわけです。

といっても現在では定義が曖昧過ぎることから使われていません。しかしながら長年使われていたカテゴリでもあるので、その中に含まれている地形にはある程度の繋がりがあります。今回はそのようなエッチ地形の内から、「トア(tor)」と「ボルンハルト(bornhardt)」の2つをざっくり紹介していこうかなと思います。

結論

  1. 風化度合いの差と差別侵食
  2. 規模で名前が変わる
  3. 花崗岩の場合は花崗岩ドームとも

節理と差別侵食

「tor」と聞くとオニオンルーティングの方を思い浮かべる方が多いかと思いますが、今回紹介するものはそっちではなく何もないところにそそり立つ岩塊のことです。日本語で岩塔ともいうのですが、本当にその地表面から飛び出しているように見える岩のタワーのようなものです。代表的なものとしてイギリスのダートムーアにある「ヘイトア(Haytor)」が挙げられます。トアという呼び名の発祥地でもありますしね。

3日前は「マサ」2日前はタフォニ昨日は風化穴といった風に、風化作用関連の地形の解説記事が連続しているためおおよそ予想はつくかと思いますが、トアという「岩のタワー」は風化が強く関係している地形です。といっても仕組みはすごいシンプルなものです。風化作用を受ける際に節理が発達しているところがより風化され侵食されやすくなり、反対に節理が発達していないところでは風化されにくく侵食されにくいため結果的に岩のタワーが残されるというものです。

こう書くと理解しづらいかと思いますので、もうちょっとゆっくり説明しようかと思います。初めに地層(というよりクソデカ岩塊)には「節理」が発達することがあります。節理の一種「柱状節理」はこのサイトのfaviconになっている(元画像)のでイメージが付きやすいかと思うのですが、要するに(一次元に限りませんが)特定の方向を向いた割れ目です。これはクソデカ岩塊が形成される際に冷却されることや、外部から力を加えられることによって形成されます。そうした節理が発達しているところでは節理の内部で少しずつ風化が進み、侵食作用を受けやすくなっています。

といっても節理は同じクソデカ岩塊において平等に形成されるとは限らないので、反対に侵食作用を受けにくいような場所も作り出されます。このせいで同じような成分で同じような場所にある岩塊においても、部分によっては侵食されやすさの度合いに差が出来ることがあります。

さてこのような状態で侵食作用を受けるとどうなるでしょう。同じクソデカ岩塊でも侵食されやすい部分がガッツリ持っていかれて、そうでない部分はあまり持っていかれないということが考えられます。その結果、先述の通りポカンと岩のタワー「トア」が形成されるというわけです。ちなみにこのようなトアの形成においては河川や洪水のような激しい侵食ではなく、緩やかな水の移動などがメインであると考えられています。洪水レベルですと根こそぎ持っていかれてしまいますからね。

また、節理そのものが少ないクソデカ岩塊の場合は風化されにくい場所が当然ながら大きくなることから、残される岩のタワーもデカくなることがあります。そのような場合は大きさはもちろんかなり「そりたつ」度合いも大きくなるといえ、名前も「ボルンハルト(bornhardt)」と呼ばれるようになります。周りがドームから剥がれていったという視点から「剝脱ドーム」と呼ばれることもあります。代表的なボルンハルトとしてはリオデジャネイロのコルコバードの丘や、下の写真にあるスリランカの世界遺産「シーギリヤ」といったものが挙げられます。

シーギリヤ

写真はBernard Gagnonさんが撮影し、Wikimedia Commons上においてCC BY-SA 3.0でライセンスされている画像を切り抜いたものです。

このシーギリヤの写真から分かる通り、明らかにヘイトアなどの「トア」とはサイズ感が異なるので、混同されることはあまりないかと思います。

またそんなボルンハルトの中で、クソデカ岩塊が花崗岩という場合があります。この場合において形成されたボルンハルトのことを特別に「花崗岩ドーム」ということがあります。

参考文献

  • 松倉公憲「地形学」朝倉書店、東京、2021年9月1日。ISBN 978-4-254-16077-2。 NCID BC09567566。OCLC 1268511660。国立国会図書館書誌ID:031624974 全国書誌番号:23586669。

最後に

エッチ地形というワード、ネーミングで若干損しているなという気持ちがずっとあったので記事にしました。半分侵食が絡むものなので侵食作用についてちゃんと書いた後に出したほうが良かったかもしれませんが。

Writer

Osumi Akari