相棒S21第2話で出てきたサルウィン語

サルウィン語ですねぇ。僕には歯が立ちません。 / 2022-10-26T00:00:00.000Z

相棒の新シーズンであるSeason 21、始まりましたね。

初回から亀山さんが旅立ったサルウィン絡みのストーリーで、視聴者に衝撃的な死を残して幕を閉じました。その続きである第2話も当然きちんと視聴させていただいたのですが、劇中にサルウィン語で書かれたメールが登場してきました。

というわけで今回はそのサルウィン語について(別に言語学に詳しいわけではないのですが)ざっくりと考えていこうかと思います。ちなみに前文を書いているこの時点で読めるとは思っていません。また不確定要素が極めて多いことからまさに「妄想モンスター」による記事ですので、この記事において確定している要素以外を用いて解析を進めるのは当然ながらおすすめできません。そのためもしこの記事に書いてあることからより発展的な分析を試みたい方は、この点に注意していただけると幸せになれるのではないかと思います。

この記事においては必然的にS21の第1話及び第2話のネタバレが含まれることが考えられます。個人的にはネタバレを受けた上で鑑賞することでストーリー以外の部分に目が行き届くようになるため、それはそれでいいものであると思っているのですが、もしこの記事へとアクセスしたあなたがネタバレを嫌う場合、もしくはこの記事を他人に紹介する場合においてその相手がネタバレを嫌う場合は注意するようにお願いいたします。

結論

  1. 僕には歯が立ちません。
  2. 人工言語…?

人工言語の著作権

日本の著作権法上、「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」は明らかに著作権法の保護を受ける著作物と考えられます。ではサルウィン語という、少なくとも自然言語ではないという意味では人工言語及びそれによって表現されたものの著作権はどのような状態にあるのでしょうか。

アイディア・表現二分論に照らせば、アイデアそのものは著作物として認められないものの、表現はその対象になるといえます。すなわち言語そのものには著作権は認められないものの、その言語によって表現された文章というのは著作権保護の対象になると考えられます。

原文

以下の「原文」はミウのスマホに表示されたアイシャによるクリスへのメールを

  • レナンジャウンの学校で右京さんが見ていたシーン
  • ミウがホテル内で読んでいた回想シーン

の2つから書き起こさせていただいたき、引用させていただくものです。

Aisha La Plant
To: Chris Garcia

Ikinalulungkot kong magpaalam sa ganitong paraan.

Sa tingin ko ito na ang pinakamagandang pasasalamat na maibibigai ko sa iyo.

Mayroon pa akong Hindi nakakamit

Gusto kong ipaubaya ito sa iyo. Hindi naman yon mahirap na bagay.

Gusto kong bisitahin ng tatay ko ang puntod ng nanay ko.

Ang tatay ko talaga ay si Mr. Umayadani . Nagkita si Mr. Kamiya at ang kanyang ina sa isang party sa Salwin 28 tarn na ang nakakaraan. Doon, ininsault ni Mr. Umayadani ang kanyang ina. at nang maglaon ay

ここから下は本編で示されていないので、今回考えるのはここまでにすることにします。またどちらのシーンにおいても斜めから覗く構成であり、ボケがあるため不鮮明であった箇所も少なくありません。そのためこの書き起こしが正確であるという保証はありません。この点はご了承ください。

読み解いてみる

ストーリー的に考えると「Mr. Kamiya」って誰?????という気持ちで胸がいっぱいなのですが、取り敢えずはメールの文章と相棒内で示されている設定から考えていこうかと思います。

背景

相棒における外国が絡んでくる事件に出てくる国名として「エルドビア」と「サルウィン」がありますが、このどちらもシリーズ内でその場所が示されています。エルドビアはペルーから生えている架空の半島状に位置する国家ですが、サルウィンはミャンマーやタイに近しい場所であるとされております。

これはS7において示されているもので、大幅に設定が変更されている箇所が今のところ見られないことから今シーズンでも東南アジアに位置するものとして考えても問題はないでしょう。すなわちサルウィン語はシナ・チベット語族のチベット・ビルマ語派、もしくはタイ・カダイ語族のいずれかもしくはその両方と強い関係性がある可能性が出てきます。宗教的には上座部仏教かヒンディー教がメジャーである可能性が高いでしょう。

またありがたいことに亀山さんのパートナーであるフリージャーナリストの美和子さんのセリフの中でこのメールの概略が示されています。

そこにはアイシャの出自に関する告白と、母親の墓参りを厩谷さんに頼んでほしいって書いてあったって。(中略)アイシャのたった一つの要求です。墓前で一言母に詫びてほしい。それで全部水に流すからって。

劇中で読み取れたメールは冒頭の一部と見られるので、この内容全てが書いてあるとは思えませんが、解読の助けになることは間違いないでしょう。

状況

このメールが送られた状況を考えることもサルウィン語を考える時に役に立つでしょう。

例えば口語と文語が分離されていた場合、メールといってもビジネスメールのように文語に振り切っている場合もあれば、友達に送る軽いメールといった場合もあります。そのため2つのケースにおける文章は同じ言語とは思えないレベルで乖離している可能性もあるでしょう。

このメールはアイシャが自殺の前に一人で書いた、革命の同志であったクリスに対する遺書です。そのためアイシャの「聖人のような」と評される性格を考えると、それなりに丁寧にかつ友人に対するフランクさを兼ね備えた文章で、口語に近いが文法がそこまで崩れていない文章が考えられます。しかし「自分を殺せ」と6人の関係者が、SMSを通じて指示を受けて悶々としているのを目の当たりにした上で、追い込むように「お前の存在が友人を悩ませている」といったメッセージを受け取っている以上、非常に不安定な精神状態であったことは想像に難くありません。そのため一部の文法上の禁則を破っていたり、スペルチェッカに引っ掛からないレベルでのミスタイプが存在するでしょう。

またアイシャは亀山さんが関わっていた学校で教育を受けたことから、亀山さんの母語であると推察される日本語もしくは亀山さんの第一外国語であろう英語の語彙から影響を受けていることが考えられます。さらには亀山さんは法学部を出ている設定があるので法律に関連する比較的固めな英語を学んでいる可能性もわずかながらあります。

文章

まず文章は左から右に読むものであることは間違いないでしょう。また文字としては英語に用いられるアルファベット26文字のみであることが読み取れることでしょう。そのため西洋人と積極的に接触する前はサルウィン語に文字が存在しなかったのか、アルファベットによる正書法が定められていると考えることが自然でしょう。さらに文頭において最後の文章「at nang maglaon~」を除いて大文字になっているので、段落の最初ではなく分の最初の文字を大文字にするという書き方がある可能性もあります。

このメールを初めて見た時に思ったのですが、母音がスペル内にきちんと書かれているなという印象を受けました。このため(現状サルウィン語による会話シーンはほとんど存在しないのですが)発音サイドからサルウィン語を考える際の助けになる可能性があります。

最後になりますが、「ko」が5回、「sa」が4回、「na」が3回この短い文章で使われています。そのためこの3つは冠詞であったりコピュラであったりするといった語であると思われます。

考察

以上、背景・状況・文章の3要素からサルウィン語の解読に役立つ情報をまとめていました。ここまでですら不確定要素が極めて多いのですが、ここからは私の考えだけでほとんど埋め尽くされると思うのでより信頼性が低くなるとは思うのですがご了承ください。

初めの「Ikinalulungkot kong magpaalam sa ganitong paraan.」という文章についてですが、状況を考えれば通常の頭語というよりも、友人もしくは現世に対する別れの言葉を簡潔に示していると捉えたほうが適切でしょう。

また中段に書かれている「Gusto~」から始まる段落2つを整えると以下のようになります。

Gusto kong ipaubaya ito sa iyo.
Hindi naman yon mahirap na bagay.
Gusto kong bisitahin ng tatay ko
ang puntod ng nanay ko.

こうすると1・3・4行目は「o」の音で韻を踏んでいるように見えます。また2行目の初めに「Hindi」という語が出ていることから、死へと向かう中でインダス川に自らを重ねているのでしょうか。

そう見ると具体的な用件はこれ以降の段落に書いてあることになります。「Mr. Umayadani」という具体的な人物名も見えますし。アイシャさんの年齢(明言されてはいないと思いますが20代ほどでしょう)と美和子さんが言った手紙の概略から考えると、文中に出てくる28という数字は年数ではないかと考えられます。すなわち「厩谷さんが28年前のパーティー(ここだけ英語から借用したと見られる"party"ですし)でアイシャさんの母親を強姦し~」といった内容ではないかと思われます。

というわけで翻訳まで至ることは出来なかったのですが、ざっくりとサルウィン語について考えてみました。何かの参考になれば幸いです。

タガログ語の可能性

…とまあここまで長々と書いてきたのですが、もう一度第2話を見直してみると宮殿のシーンが出てきました。ロケ地情報を調べてみるとフィリピンの「Laguna Provincial Capitol Building」という建物が外観として用いられているという情報が見つかりました。

Capitol building of the province of Laguna.

ここで思ったのですが、この「サルウィン語」、タガログ語感がしないわけではありません。タガログ語に関する知識がほとんどないものの、ラテン文字でもっぱら表記されており、咳をした時の音のような声門破裂音(ʔ)を除いて特殊な文字を使用しないことは知っていました。もしかして…と思いGoogle翻訳に突っ込んでみると以下のような文章が出てきました。

こんな形でお別れしてしまい、申し訳ありません。

これが私があなたにできる最高の感謝だと思います。

うわ~~~~~~~~!!!!

多分これが正解ですね。深夜3時に一生懸命考えていた私を返してくれ。

参考文献

関連リンク

最後に

というわけで言語学も語学も何にも分からないのに、サルウィン語が気になったことから記事を立ててしまいました。多分タガログ語ですがより正確なものをお求めになりたい方は、公式から何か出るのを待つか知り合いの言語学者に聞いてみてください。

あとやっぱり「Mr. Kamiya」って誰?????

追記: 「「signme」という相棒S21第9話で出てきたSNS」という記事で第9話に出てきたSNSの構造について考えてみた記事を書きました。本当に何をしているのか自分でも分かっていません。

Writer

Osumi Akari