沖積平野というひねりの無い名前の土地

水のおかげで積もって出来る平らな土地 / 2022-12-13T00:00:00.000Z

沖積平野というものをご存じでしょうか。関東圏や北海道の石狩川流域にお住いの方々ならかなり身近なワードであるのではないかと思います。しかしながら「沖積」という言葉があまり身近な言葉ではないことから、沖積平野が具体的にどのようなものかはよく分かっていないのではないでしょうか。

というわけで今回は沖積平野(alluvial plain)とは何かについてざっくりと紹介してみようかと思います。

結論

  1. 河川が暴れてできる
  2. 川に近い低い場所

暴れる

河川というものを見たことがあるでしょうか。この記事をご覧になっている方の多くは見たことがあるかと思います。多くの河川は特定の場所を継続的に流れており、そこから毎日のように水が溢れてしまうことはあまり多くはないといえるでしょう。しかしながら水があふれてしまうことが全くないことはありません。一般的にこのようなイベントのことを「洪水」と呼び、上流部に大量の降雨があったことや積雪がある地域においては気温の急激な上昇が起こることなどによって発生します。

また、ストリームパワーの概念から考えれば、水量が増えれば侵食運搬作用の力がより大きくなるといえ、上流部から大量の土砂が運搬されてきます。扇状地について解説した記事においても説明させていただきましたが、ストリームパワーは水深に依存することが知られています。このことは水量が増えて水深が増していることからも簡単にイメージできるかと思います。

しかしながらその「水深が増す」条件として、水路の幅がほとんど変化しないことが考えられます。幅が変化しないからこそ水量が増えた分水深が増していきます。そのため水量が増しても水路の幅がそれ以上に広くなればストリームパワー、ひいては土砂の運搬能力は上がるどころか、むしろ大きく下がってしまうと考えられます。

さて、ここで洪水が起こる状況を考えてみましょう。先述の通り河川からあふれ出た水は周囲へ広がっていくのですが、周囲が山地でもない限り様々な方向に広がっていきます。そのため「幅」が極めて増大することから水深が低下してしまい、堆積作用が極めて起こりやすくなります。

こうして形成されるのが沖積平野です。ちなみに沖積という言葉は河川の近辺に土砂が堆積することを意味する言葉なので、洪水によって溢れ出た水が周囲に土砂を堆積させるということを示すのにぴったりな言葉です。

低い場所

一般的に沖積平野は河川とほぼ同じ高さにあり、水運の便や水利に恵まれています。そのため日本のような水稲を大規模に栽培する地域においては安定的に大量の穀物が得られることが示されています。他方、建築物を建築する際には地盤があまり良くなく、高層建築はおろか場合によっては通常の住宅ですら立てるのに向かないことがあります。しかしながら農業的に見れば極めて魅力的な場所ですので、人々は沖積平野の近辺や、平野内に点在する「自然堤防」上に集落を作ることが知られています。

天井川

洪水を防ぐ方法は様々な種類がありますが、その一つとして「堤防を嵩上げすること」があります。このことは適切に行えば極めて効果的で、堤外への出水回数そのものを抑えることでその地域を守る重要な治水事業です。

しかしながらあまりにも河川ギリギリに堤防を作ったり、そもそも堆積が盛んにおこなわれている場所、すなわち定期的な洪水によって沖積平野が形成されているような場所において、適切な対処無しに嵩上げを行ってしまうと、河床への土砂の堆積がそれ以前と比較して盛んになってしまいます。そのようになると河床と堤高の差が縮まってしまい、嵩上げした効果が無くなってしまうことが問題となるため、さらなる堤防の嵩上げが行われます。

これを繰り返して、周囲よりも河床が著しく高くなってしまった河川のことを「天井川」といいます。日本においては風化しやすい花崗岩が周囲に多い上、河川の流量が多いことやかつて過剰伐採が実施されていた影響で土砂の流出が多かった滋賀県によく見られます。天井川が一度形成されてしまうとその解決は難しいことが多いことが知られています。河床の浚渫は一時的な対症療法にすぎず、根本的な解決には河川敷の拡張、すなわち周囲に住んでいる人々の移転が必要とされるからです。

最後に

記事ストックが切れることを防止するために、ある程度先の日付に出す記事を書いているのですが、16日と17日分を書き終わった段階でこの記事を書き忘れていたことに気づいたんですよね。というわけでこの記事を大慌てで書いたのですが実際に投稿したのは14日付となってしまいました。今後も記事ストックを切らさないように善処していきたいと思います。

Writer

Osumi Akari