野外を歩いているとよく「 偽礫 (rip-up clasts)」に遭遇します。偽物の礫…という名前の割には礫に似ているとは思いませんが、礫と間違えてしまう人がいるのも分からなくはありません。
そのような偽礫はどのようにして形成されるのかについてざっくり紹介しようかと思います。
結論
- 基本的には泥かシルト
- ひとまとめに侵食
- ひとまとめに堆積
泥が礫に化ける(?)
砕屑物が運搬されるには、それに見合う力が必要となります。水流の強さのみが関係すると思ってしまうかもしれませんが、それだけではなく様々な状況に影響されます。大きなものの中に砕屑物そのものの大きさが存在します。
上に示した図は「ユールストロームダイアグラム」と呼ばれるものの概略です。かなり理想的な状況で行われたものですのでこれを直接適用することは出来ませんが、礫と泥は砂と比較して流速が早い状況でなければ侵食・運搬され無いという傾向は読み取れます。現実においてもこの傾向は見られ、泥やシルトは砂に比べて運搬されづらいとされています。
一般に侵食というのは風化が前段階にあることもあり、砕屑物それぞれが塊とならずに行われます。これは礫や泥についても同じことが言えますが、必ずしもそうはならない場合があります。粘土鉱物と呼ばれる鉱物が泥に含まれていることが多いため、泥は単に小さな砂粒というような挙動ではなく泥のそれぞれ(泥粒というべきでしょうか)が固結しているため塊のような、アイスクリームをディッシャーですくうような形で侵食・運搬されていくことがあります。このように塊のまま侵食・運搬されるとそれを受けるのに必要な流速が少ないこともあり、そのような現象が起こることが起こることがあります。ちなみにこのような形成のされ方をするため、偽礫中には泥やシルト、粘土といったもの以外が含まれることがあります。
偽礫が堆積
そうして侵食された泥の塊はずっとプカプカ運搬され続けるということはありません。いずれはどこかに堆積します。堆積した後に改めて侵食されたり堆積構造が形成されたりすることは往々にしてありますが、先述した通り偽礫は泥それぞれよりもまとまって存在しやすいため、偽礫が偽礫のまま堆積することが多いと言えます。
偽礫が偽礫のまま堆積するということは、地層中にも偽礫のまま見られるということが言えます。地層中に存在する偽礫は礫と思ってしまうことも無いことは無いと思いますが、大半の場合において周囲を観察すれば礫が単体で存在するような環境ではないことが分かりますし、表面をちょっと削(って舐め)れば見分けはつくと思います。
参考文献
- 保柳康一、公文富士夫、松田博貴 著、日本地質学会フィールドジオロジー刊行委員会 編『堆積物と堆積岩』 3巻、共立出版、東京〈フィールドジオロジー〉、2004年4月。ISBN 978-4-320-04683-2。 NCID BA66873242。OCLC 676428748。OL 30536648M 国立国会図書館書誌ID: 000007329924 全国書誌番号: 20585030。
最後に
前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 海底では「ブーマシーケンス」の通りに堆積するのか?
共通テスト関連で地学関係の記事を書いてはいましたが、ざっくりわかる堆積システムシリーズの記事としては1年ぶりに書いてみました。毎日記事を更新できるほどの余裕は残念ながら無くなってしまいましたが、更新できる際にゆっくりと更新していきたいと思います。