Webブラウザ「Firefox」の開発で知られるMozillaは、Firefox以外にもいくつかプロダクトを保有しています。例えばMullvadとの連携によって提供されている「Mozilla VPN」やWebサービス等に本当のメールアドレスを提供しなくても良い「Firefox Relay」などがあります。
この中でMozillaが以前買収した2つのサービスが終了のお知らせが出てしまいました。この記事では、その詳細と理由について書いていこうかと思います。
結論
- PocketとFackspotが終了
- 7月にほぼサービスが終了し、一部は10月まで使用可能
- 「人々が最も必要とする新しいFirefoxの機能に焦点を当てる」としている
Pocketの終了
2025年5月23日、Pocketを使用しているユーザーに対して続々と「Pocketが終了する」といった旨のメールが届いたようです。
Pocket廃止マジか…。ガッツリ使ってたので衝撃が大きい。長い間お世話になりました。😭🙇🏻♂️ pic.twitter.com/CECOtEvoFY
— たか (@nishidack) May 22, 2025
Pocketはブラウザにあったブックマークを進化させたようなサービスで、閲覧したWebサイトを保存すると同時に複数端末へ同期するというものです。また、このシステムにおいてユーザーの注目が集まっているものをキュレーションし、Exploreページで公開しています。
サービス終了に関しては「So long, farewell, Auf Wiedersehen...」というページを作成しており、人々がウェブ上でコンテンツを保存して消費する方法は進化してきたこと・Firefoxにおいてタブグループ機能や強化されたブックマークが使用可能となったことを理由として挙げています。プレミアムサブスクリプションの終了及びデータのエクスポートの方法とその期限(2025年10月8日)に関して及びニュースレターについても述べられており、ニュースレターは「Ten Tabs」に改名されて今後も運営される見込みだとのことです。
Fakespotも終了
Mozillaが2023年に買収したFakespotも同様にサービスの終了がアナウンスされています。こちらについてはFakespotのページ上において具体的に説明が行われておらず、Fakespotのページの上部にデカデカと「Important Update: Fakespot will shut down on July 1, 2025. On July 1, you will no longer be able to use the Fakespot extensions, mobile apps, or website. Thanks for supporting our journey.」と書かれているのみです。
FakespotはAmazonやウォルマートといったレビューが投稿できるサイトにおいて、嘘レビューがないかどうかをチェックする、海外版サクラチェッカーと言えるものです。2016年から運営が始まっており、2023年にMozillaに買収されています。公式サイトにおいては「インターネットをオープンにし、誰もがアクセスできるようにする。信頼、プライバシー、セキュリティの融合がデジタル体験の不可欠な部分を占める、インターネットの未来がどのように見えるべきかというビジョンを共有」しているとされています。
Mozillaの見解
これらのサービス終了に関してMozillaはブログにおいて「Investing in what moves the internet forward」という記事を公開しています。ここにおいてMozillaは独立したブラウザーの開発において最大の効果が得られるように、時間とリソースを注ぎ込むことについて意図を持つ必要があるとし、Firefoxに注力するため2製品を廃止したとしています。
Pocketについてはほぼ先述したことが述べられています。Fakespotに関しては、アイデアはMozillaと共鳴していたものの、維持できるようなモデルではなかったとしています。
これによってFirefoxの強化、具体的には垂直タブ・スマートな検索・AIを活用した機能といったツールでインターネットの次の時代を作るとしています。
最後に
何かしらの事情でWebサービスが終了してしまうというのはある種「宿命」とはいえ、Mozillaが一気に買収したサービスを終了するというのはある種異常事態と言えるでしょう。近年Googleの分割に関する問題に(Googleに収益の大半を依存する)Mozillaが巻き込まれているという話があるのですが、それと関係している可能性もあるような気がしています。
また近年、Mozilla HubやMozilla Socialなどといった、上手く育てれば多くのユーザーに使用されまた実際に役立つサービスが廃止されるといった、必ずしも自明ではない経営判断が目立っています。現在入手できる最新のMozilla Foundation and Subsidiaries December 31, 2023 and 2022によると投資及び買収を強化しています。これはロイヤリティーへの依存を下げるという試みであり、個人的には評価していますが、それによって本来提供されていたプロダクトやサービスが悪化するようなことが発生していることも否定するべきではないと思っています。今後Mozillaにはこうした行動に関する情報の公開と、スタンスを明瞭することを期待したいと思います。