Fediverseソフトウェア「Mastodon」の開発を行う非営利団体がホスティングサービスを提供開始

既にECが顧客となっておりEU内でホスティングが行われる / 2025年09月19日

「Mastodon gGmbH」は、主にActivityPubを使用して互いに通信を行うFediverse上で使われるソフトウェア「Mastodon」の開発や商標等の管理を行っているドイツの非営利団体です。プロジェクトの創始者であるオイゲン・ロッコ氏などが関与しており、積極的にMastodonの開発等を行っています。

本日、このMastodon gGmbHが、自ら開発するMastodonのホスティングサービスを発表しました。この記事では、その詳細について簡単にまとめていきたいと思っています。

結論

  1. Mastodonの開発を行う非営利団体が、「持続可能な財務基盤を確立する」ために大規模な顧客向けのMastodonのホスティングサービスを開始
  2. EU内でホスティングされ、既にEC等の公的機関などが顧客に
  3. リリースされたばかりのサービスで、不明な点も

Mastodonのホスティング

2025年9月19日、Mastodonの開発や商標権等の管理等を行う「Mastodon gGmbH」は、公式アカウントで以下のような投稿を行いました。

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詳細はこちらのブログ記事に書かれており、Mastodonの 開発団体が自らホスティングサービスを提供する 旨が記載されています。これは2025年にMastodon gGmbHが掲げている目標の1つである「さらなる持続可能な財務基盤を確立する(to establish a more sustainable financial base)」ために行うとされており、昨年から相次いでECのMastodonインスタンス運営を請け負ったり、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州のインスタンスのサポートを行っている流れであるとされています。

ソフトウェアとしてのMastodon公式Webサイトには専用ページが設けられ、詳細な案内が行われています。そこにおいてはホスティングはEUで行われることや、顧客の能力に応じて弾力的にサービスを提供する旨が示されています。

ホスティングサービスの専用ページのスクリーンショット。2025年9月19日時点。

先ほど紹介したECやシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州に加えて、Altstore@[email protected])による推薦文が掲載されています。ここから、このサービスの対象としては公的機関に限らずある程度実体と規模のある組織を想定していることが考えられます。

また、顧客は「組織のアイデンティティーに合わせ、見た目やルールを設定(Set the look, feel, and rules to fit your organizational identity)」可能であるとされており、ある程度のカスタマイズが可能であることが考えられます。また「ルール」というものがどこまでのものを指すかどうかは不明ですが、コンテンツについて顧客が一定程度のコントロールを行うことが可能であると思われます。

しかしながら、現状リリースされたばかりのサービスですので、不明瞭な点があるのも事実です。そのため、興味のある方はこちらから問い合わせをしてみるとよいかと思います。

関連リンク

最後に

前回の技術関係の記事: 札幌圏消防指令センターの始動に伴って「emergency-dispatch」を修正

ソフトウェアの開発元がホスティングサービス(マネージドサービス)を行うというのは、近年のFLOSSソフトウェアではよく行われる手法です。これで成功したものとしてWordPressやGitLabなどが挙げられます。こうしたサービスを行うことによって、顧客は一番ソフトウェアを理解している開発者によるサポートを直接受けられる上、開発者は安定かつ予測可能な収入を継続的に得ることが可能となっています。

ただ、個人的に懸念している点としてはこうしたサービスにMastodonインスタンスが集中することによって、結果として分散性が失われてしまうことが考えられるという点です。Mastodonに限らずFediverseでは物理的にもソフトウェア的にも分散されていることによるネットワークとしての効果・価値があると思っています。しかしながら実体が同じ管理者がいる1つのサーバーに収束してしまうと、そういった効果が結果として薄れてしまい、ひいてはFediverseそのものの価値が下がってしまうことが考えられます。もちろん、そうはならないとは思いますが、今後とも注視していきたいと思います。

Writer

Osumi Akari

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