日本時間で昨日の12時15分頃から、過去のWebサイトを確認できる「WaybackMachine」が利用できない状態となっており、これは「OpenLibrary」という本に関するデータベースサイトにも影響を及ぼしていました。いずれもInternet Archiveが運営するWebサイトで、公式声明が無いまま利用できない状態が続いていました。
しかしながら、日本時間20日夜に公式声明が出たのち、21日午前にはほぼ復旧した模様です。この記事ではその概要を簡単に記します。
結論
- 「WaybackMachine」や「OpenLibrary」などはほぼ復旧か
- 光ファイバー切断が原因と発表
- なぜ切断されたかは不明
公式による投稿
日本時間2025年11月20日22時51分頃、Internet ArchiveはMastodonにおいて以下の投稿を行いました。同様の投稿はTwitter(現: X)及びBlueskyにおいても行われています。
これは遅くとも日本時間12時15分頃から始まっていたエラー後の初めての投稿です。ここにおいてはその原因を「ネットワーク機器の故障」としていました。また、私が20日の夜20時時点で確認していた通り、WaybackMachineやOpenLibraryに影響が及んでいることが確認されたとのことです。
このおよそ6時間30分後である日本時間11月21日5時13分に、以下のような投稿が行われました。先ほど同じく、同一内容の投稿がTwitter・Blueskyにおいても行われています。
復旧に関する進捗状況が共有されるとともに、原因に関する投稿が行われています。初めに21日5時の時点では一部速度が遅い場合があるものの大半が復旧したとのことです。また、この投稿においてWaybackMachineはオフラインのままである旨が書かれていますが、21日13時頃に筆者が試したところ問題なく利用することが出来ましたので、この投稿が行われた後にさらなる対応が行われたものだと思われます。
原因

朝5時の投稿において、今回の原因が データセンター間における光ファイバーの切断 である旨が示されています。「ネットワーク機器の故障」よりもより詳細な情報となっています。2021年時点における発表(5分55秒付近から)によると、サンフランシスコ市内に少なくとも4拠点が配置されているようで、これらの中の経路のいずれかに支障が生じたことがInternet Archiveの各サイトをダウンさせてしまったと考えられます。
Internet Archiveは過去に様々な原因で一時的にアクセスできない状況に陥ったことがあります。その中において、ハードウェア的な要因でダウンしたものは、2023年3月の停電に起因するものが挙げられます。
Argh. There is a large PG&E outage around one of @internetarchive datacenters. :(
— Brewster Kahle (@brewster_kahle) March 22, 2023
(this is happening more often...) pic.twitter.com/SLvLt0jIsY
Internet Archive創設者であるブリュースター・ケール氏は、「よく起こる出来事」だとしつつPG&E社の電力供給がストップしたことが原因であるとTwitterで述べています。この際はカリフォルニア州のサンフランシスコ周辺で強風を原因とした18万軒以上の大規模停電が発生しており、それに巻き込まれた形となったとみられています。
停電による一時的なサービス停止は2024年7月にも発生しており、この際は記録的な猛暑が間接的に停電を誘発したものとなっています。この際、複数存在するInternet Archiveのデータセンターのうちダウンしたものは1つのみでしたが、連鎖的にサーバーダウンが発生してしまったとのことです。
Internet Archive sites are back up after last night's unexpected fiber cut. Let's go back to just reading about drama and suspense - the library is now open.
— Internet Archive (@internetarchive) June 25, 2019
しかしながら、今回の原因は光ファイバーの切断ですので、これらとは少々趣が異なるものとなっています。光ファイバーの切断による障害はInternet Archiveで2019年に発生しています。この際も今回と同様に復旧まである程度時間がかかったものと思われます。
先ほど紹介した2021年における発表においては、データセンター間の通信についても触れられています。先ほど示された4拠点間は100Gbpsの回線でリング状に(双方向で)結ばれているとのことです。これらの全てが独自に敷設されたであるかどうかは分かりませんが、サンフランシスコ市の歩道の下などにこれらの光ファイバーが敷設されているとのことで、マンホールも「IA」と手書きされたものを使用していることから、少なくともその一部はInternet Archiveによって自ら敷設されたものだと考えられます。
Internet Archive側も、長時間のサービス停止を招くものとして、一時的な電圧低下や完全な停電に並び、ファイバーの切断を挙げています。その多くは工事によって誤って切断されてしまうことが原因であるとしています。
今回もそういった工事に伴う事故であるかどうかは不明ですが、「trucks are rolling」と書いてあることから、物理的な修復が試みられたことが示唆されています。結果としてサービスは復旧しましたので、復旧が完了したか迂回によりサービスを再開するに十分な通信が確保できたかのいずれかと思われます。
最後に
いわゆるリング型ネットワークを構築する利点の1つとして、大規模伝送や高信頼性の確保というメリットが挙げられます。また双方向通信を採用することによって、一点で障害が発生した場合でも、迂回させることが可能となっています。
しかしながら、現実には少なくとも10時間以上の障害が発生してしまいました。私たちがネットワークを構築する際、「信頼性が高い」とされるものを信用しすぎるべきではないという教訓となったのかもしれません。