2025年12月8日23時15分頃、青森県東方沖で最大震度6強の地震が発生しました。これはマグニチュード7.5の地震で、気象庁より「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されています。
一方、従来から懸念されていた通り、こういった 自然災害に乗じたデマが出回っている 様子が確認されました。この記事では私が収集できたSNS上のデマを紹介し、これらのデマに対応する方法を簡単にまとめます。
結論
- 地震の発生に伴い、SNSが活用されるように
- AI生成の画像と短縮リンクサービスを悪用した投稿等が散見
- 普段通りの情報の信頼性の確認を
災害とインターネット
災害時においてSNSを活用することは、電話等の輻輳が発生しやすい環境下における情報収集ツールとして便利であると言えます。実際に総務省も活用を推奨しています。SNS上においては、テレビやWebサイト等よりも速いスピードで地域の情報が投稿されることもあり、情報流通の観点から見てもよいことだと考えられます。
SNSに限らず災害が発生するとインターネットを活用した情報収集が活発となります。世界規模のネットワークを運営しているCDN事業者であるCloudflareが、トラフィック量等の情報を公開している「Cloudflare Radar」によれば、青森県東方沖地震の発生に伴いHTTPリクエストが通常時から22%増加したとのことです。
A M7.6 earthquake occurred off the coast of Japan at 14:15 UTC, and drove a near-immediate 22% increase in request traffic from the country. A concurrent bump in traffic from mobile devices was observed at that time as well.https://t.co/QSAULpdxyChttps://t.co/5L4yhwKzUD pic.twitter.com/8Ww5UOmd0n
— Cloudflare Radar (@CloudflareRadar) December 8, 2025
一方、従前からこうした災害時にはデマが出回ることが知られており、行政や報道機関、ファクトチェック機関など様々な立場から注意喚起が行われています。
青森県東方沖を震源とする地震に関し、SNS等のインターネット上で、科学的根拠のない言説等の真偽不明の情報が流通するおそれがあります。
— 総務省 (@MIC_JAPAN) December 8, 2025
インターネット上の偽・誤情報には十分ご注意ください。 pic.twitter.com/Sxqzd5otkY
【注意喚起】青森県で震度6強の強い地震を観測しました。このような災害が予想される時、過去の地震画像やAI生成画像、AI生成動画など偽・誤情報が流布することがあります。疑わしい情報に触れた時は安易に拡散せず、立ち止まり、確認して下さい。それが知人や有名人の発信であっても確認して下さい。
— ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ) (@FIJ_factcheck) December 8, 2025
【デマに注意を!】
— 日テレ【気象・防災】そらジロー (@ntvsorajiro) December 8, 2025
災害時には、よく確かめていない情報に振り回されることがあります。
情報の発信元が公共性が高く信頼できるものなのか、しっかり調べましょう。
友人からの情報も、そのまま鵜呑みにしないで、情報源をしっかり確認しましょう。#地震 #デマ
結論から言えば、今回の地震においてもこうしたデマが散見されました。次項においては観測されたデマを紹介していきます。
青森県東方沖地震におけるデマ
先述の通り、今回の地震は最大震度6強という揺れが観測されている地震であり、また津波警報も発出され実際に津波が観測されていることから、注目される災害ではあります。しかしながら、この災害に注目が集まることにより、それに乗じたデマ等が発生してしまいます。
例えば、以下のような投稿がX上に行われました。

一見すると本物に見えるような画像と共に、以下のようなテキストがつけられています。
こちら浦河町
3mは余裕で超えるくらいの津波が到達しました。
私は安全圏からの撮影なので無事ですが、他の住民が心配です
皆さん余震、津波、そして地震に気をつけて避難してください。
現場からは以上です。浦河の沖のLIVEカメラ映像↓
is[.]gd/youtube_com_jp ...
しかしながら、これは 偽の投稿 です。確かに北海道浦河町では50cmの津波が観測されていますし、地形等によって津波が増幅されてしまうこともありますし、「3mは余裕で超えるくらいの津波が到達」してしまう可能性は否定できません。ただ波の形状に過学習の様子が見られたり(本当の投稿であったとしたら)深夜23時~1時に撮影された写真であるはずなのにシャープすぎたり…といったAI生成画像の特徴が多数見られます。
またこうした大規模な津波が押し寄せたとした場合、日が明けた9日においてその片付け等が必要とされますがそうした投稿やニュースは発見できていません。最後に is.gd から始まる短縮リンクにおいて「浦河の沖のLIVEカメラ映像」への誘導が行われています。「youtube_com_jp」という文字列を含んでいることから、YouTubeへのリンクと思ってしまうかもしれません。しかしながら、こうした短縮リンクをわざわざ使用している点から、本当のライブカメラへのリンクの可能性は低いと思われます。ただし調査を行う前に投稿が削除されてしまったため詳細な確認は出来ていません。
同様の投稿は、毛色は異なりますが他のアカウントからも行われています。この投稿は地震予知を行っていたユーザーがいるとして、それを紹介しているようなものとなっています。

ここにおいては投稿が削除される前にリンクを取得することが出来ました。「x_com_jp」という文字列が含まれており、Twitterにおけるユーザー等へのリンクのように見えます。
これが本当であるかどうかを確認するため、短縮リンクサービスis.gdの機能である、後ろに-(ハイフン)を付けることで短縮される前のリンクを確認できる機能を活用し、添付されているリンクの詳細を確認しました。

このリンクでは「TikTok Lite」への誘導が行われていたことが明らかとなりました。TikTok Liteではいわゆる「アフィリエイト」といった形で、特定のURLからTikTok Liteのインストール等があった場合にポイントを付与しています。付与されるポイントが数千円換算とかなり高額であるため、「ポイ活」等においても人気であるサービスです。
しかしながら、こうした注目を集める事案と短縮リンク、そして生成AIを悪用してまでアフィリエイトを試みるユーザーがいるのも事実です。今回そういった注目を受けている青森県東方沖地震において、そうした投稿が確認されてしまいました。
無断転載による「インプレッション稼ぎ」も
また明らかに誤っている情報ではないものの、インプレッションの獲得が目的と思われる投稿も散見されました。こうした「インプレゾンビ」は、2024年1月1日に発生した能登半島地震時においても問題となりました。昨年10月のX Premiumにおける収益分配プログラムの変更などによって改善されてはいますが、今回の地震においても見られてしまいました。例えば、以下のような投稿です。

これは地震によってストーブが倒れてしまったことに伴う青森市幸畑における火災を映した動画です。確かに報道などから動画のような火災が発生していることは確認できますし、以下に示す通り報道機関に加えて一般のTwitterユーザーが投稿を行っている様子が確認できます。
地震の影響と思われる青森市幸畑で火災。 pic.twitter.com/25rIqp1jND
— 青森消防マニア (@Def59vKN3k7iue0) December 8, 2025
しかし投稿者は明らかに日本人ではないものと思われます。過去の投稿やXによる所在地表記から推察するに、インドから行われた投稿である可能性が高いと言えます。このようなものは確かに「デマ」ではありませんが、健全ではないものといえるでしょう。また、転載された投稿を他のXプレミアム加入者がさらに引用するなどして、「インプレゾンビによるエコーチェンバー」というべき投稿が広まってしまっています。
なお、こうした投稿に対してリツイート等の反応をしてしまうことは、そうした「インプレゾンビ」を利することとなってしまいます。ツイート等を広める際は念のため、こういったユーザーによる投稿ではないかを確かめることが大切であると考えます。
最後に
生成AIを悪用したデマとしては2022年9月の静岡市清水区における偽画像の拡散が記憶に新しいですが、こうした事案がまたも発生してしまいましたし、画像に関してもよく見なければ破綻を見つけることが難しいものとなってしまっています。
しかしながら、災害時においてSNSが役に立っていることは確かです。この問題は容易に解決することが困難であるため、当面はリスクがあることを前提としつつSNSを活用する必要があると考えています。
情報の真偽、少なくとも明らかな虚偽をはじくプロセスにおいて、平時と有事の境界線など本来は無いはずです。しかしながら、災害時は「災害時だから」という理由でどうしても拡散等を行う際に心の中でガードを下げてしまいます。私は普段通りのいわゆる「メディアリテラシー」を貫くことがこうした偽情報の拡散を防ぐうえで重要なことかと思います。これはSNSに対してだろうがマスメディアに対してだろうが変わりません。
ただ、こうした対策を行うことによって、SNSの強みである「速報性」が損なわれてしまうと思う方もいるかもしれません。しかし、速いことのみを重要視して、偽の情報が流通してしまっては元も子もありません。 「速報性」は、あくまで「正確な情報」が伴って初めて価値を持つ ものです。
この記事を書いている私が「デマの震源」となってしまわないよう、これからも十分な注意を払います。そしてこの記事を読んでいるあなたも、デマを作り出してしまったり広めてしまったりしないように祈ります。