JR九州がタッチ決済乗車を本格スタート、福岡県・佐賀県内の一部路線で2026年4月から

クレカ等のタッチ決済で列車に乗車できるように、既存の実証実験のエリアと異なることに注意 / 2025年12月12日

JR九州はその名の通り、九州地方において旅客の輸送等を行っているJRグループの鉄道会社です。従前鉄道に乗る際の支払い方法として、SUGOCAなどのFelica技術を活用した「交通系IC」が主なキャッシュレス手段として活用されてきました。

12月12日、JR九州は福岡県・佐賀県内のうち92駅間(区間及び導入時期は後述)において、2026年4月からクレジットカード等によるタッチ決済乗車がスタートすることが発表されました。これは 2022年からスタートしていたタッチ決済の実証実験とは区間が異なり、門司港駅~久留米駅間の鹿児島本線を中心としたもの です。この記事ではその概要を簡単にまとめます。

結論

  1. JRグループ初の本格的なタッチ決済乗車
  2. 2026年4月から門司港駅~久留米駅間を中心に徐々に導入
  3. 西鉄線や福岡市営地下鉄でのタッチ決済が既に使用可能であるため、さらに便利に

福岡県内の92駅間で来年4月から

JR九州では2022年7月から博多駅~香椎駅間において対応したことを皮切りに、鹿児島や大分などにおいてもタッチ決済を活用した乗車の実証実験を行っていました。この実証実験の結果から、2026年4月から福岡県内の92駅間におけるタッチ決済乗車の導入が開始されるとのことです。

共同通信によれば、鉄道の乗車に関してタッチ決済を使用可能とするのはJRグループ初の試みであるとのことです。

クレカのタッチ決済が使用可能となる福岡県内の92駅を示した図のスクリーンショット。JR九州他4社の共同リリースより。12月12日時点。

タッチ決済が使用可能となる92駅は以上の図の通りです。路線名で表すと以下の通りとなります。

  • 鹿児島本線: 門司港駅~久留米駅間
  • 筑豊本線: 若松駅~桂川駅間
  • 篠栗線: 全線
  • 香椎線: 全線

なお、サービス開始は2026年4月ですが、この時点で全ての区間でタッチ決済が使用可能となるわけではありません。4月のサービス開始当初は鹿児島本線の門司港駅~久留米駅間及び、香椎線の海ノ中道駅においてのみ使用可能となる予定です。残りの区間に関しては2026年の秋を目途にスタートする予定とのことです。

また、指宿枕崎線の鹿児島中央駅~指宿駅間や、日豊本線及び久大本線の別府駅~由布院駅間においてタッチ決済乗車の実証実験が行われていましたが、これは終了するとのことです。

福岡県でのタッチ決済による鉄道利用

福岡県内での鉄道の乗車の際においてクレジットカード等によるタッチ決済を利用できるのは、JR九州のみではありません。福岡市地下鉄や西鉄線においてもタッチ決済乗車が可能となっています。

これらの鉄道事業者は「タッチ決済」のみならず「交通系IC」による支払いにも対応しており、必要に合わせて決済手段が選べるような形となっています。

ただし 地下鉄空港線と姪浜駅を境に直通運転を行っているJR九州の筑肥線は、今回のタッチ決済の導入範囲に含まれておりません 。このため、空港線からそのまま西へ行ってしまうとタッチ決済による乗車が可能な範囲からはみ出てしまう可能性がありますので、注意が必要です。

関連リンク

最後に

前回の技術に関する記事: 法令第1条の決まり字(?)を検索できるようにした

いわゆる「交通系IC」の特徴としては、Felica技術(NFC Type-F)をベースとしているため処理速度が極めて高速でありラッシュ時の改札には適していますが、その反面コストが極めて高いというものを持っています。そのためある程度時間がかかってよい輸送密度の区間においては、「交通系IC」はオーバースペックとなりやすいという欠陥も持っています。また、「交通系IC」は日本国内で発展してきた半面、外国からの観光客にとっては(最近ではiPhoneアプリ等での導入も可能となりましたが)Welcome Suica等を新たに取り入れる必要があり、若干不便な面もありました。

一方クレジットカードの「タッチ決済」は、NFC Type-A/B規格で通信する非接触決済(EMVコンタクトレス)であり、大半の国際クレジットカードネットワークが対応しているものです。決済速度はFelicaと比較すれば低速で大都市の通勤ラッシュを捌くには課題が残りますが、最大でも数秒程度と高速であることには変わりありません。また、導入コストがFelica決済と比べて低く海外からの観光客にとっても扱いやすいという特徴があります。

熊本市電を除く公共交通機関のように「交通系IC」を全廃しクレジットカード等に寄せるといった極端な事例は少ないかと思いますが、今後とも「交通系IC」と併用する形でタッチ決済の導入が進むでしょう。タッチ決済が広まれば「交通系IC」の優位が相対的に下がってしまっていくと思われます。「teppay」としてコード決済に手を出してみたりポイントでの優遇を試みてみたりと様々な施策を行っているとは思いますが、今後どうなっていくかはまだまだ不透明です。熊本のようにならない限り、極端に不便になるようなことは無いかと思いますが、今後とも注視していこうかと思います。

Writer

Osumi Akari

カテゴリ