.govというドメインを持つサイトは、アメリカ合衆国の(軍を除く)政府機関による公式Webサイトです。これは.govを取得可能な団体が政府機関(郡や学区などのレベルの機関も含みますが)に限られているためであり、今も昔も極めて簡便に公式サイトを見分ける手法として使用されています。
この度 freedom.gov というドメインが取得され、ランディングページとしか形容しがたい状況ですがこの記事を公開している現在Webサイトが公開されています。この記事ではこのドメイン上で構築されるとみられるWebサイトについて、簡単に情報をまとめていきたいと思います。
結論
- アメリカ合衆国が
freedom.govを構築中 - 現状公開されているサイトには粗が目立つ
- 他国に禁止されたコンテンツを公開するという予想が存在
freedom.gov
このfreedom.govはどういった組織によって開設されているのでしょうか。
.govのWHOISによれば、このドメインは2026年1月12日に取得されていることが分かります。一方、どの部局等が保有しているかの情報に関してはほぼ全てが「REDACTED FOR PRIVACY」として公開されておらず、実態は不明であるように思えます。以下、日本時間15時時点におけるWHOIS情報の全文です。
$ whois freedom.gov
Domain Name: freedom.gov
Registrar WHOIS Server: whois.nic.gov
Registrar URL: https://get.gov
Updated Date: 2026-01-17T13:18:54Z
Creation Date: 2026-01-12T13:18:54Z
Registry Expiry Date: 2027-01-12T13:18:54Z
Registrar: get.gov
Registrar IANA ID: 8888888
Registrar Abuse Contact Email:
Registrar Abuse Contact Phone:
Domain Status: serverTransferProhibited https://icann.org/epp#serverTransferProhibited
Registry Registrant ID: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Name: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Organization: Cybersecurity and Infrastructure Security Agency
Registrant Street: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant City: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant State/Province: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Postal Code: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Country: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Phone: REDACTED FOR PRIVACY
Registrant Email: REDACTED FOR PRIVACY
Registry Admin ID: REDACTED FOR PRIVACY
Admin Name: CSD/CB – Attn: .gov TLD
Admin Organization: Cybersecurity and Infrastructure Security Agency
Admin Street: 1110 N. Glebe Rd
Admin City: Arlington
Admin State/Province: VA
Admin Postal Code: 22201
Admin Country: US
Admin Phone: +1.8882820870
Admin Email: [email protected]
Registry Tech ID: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Name: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Organization: Cybersecurity and Infrastructure Security Agency
Tech Street: REDACTED FOR PRIVACY
Tech City: REDACTED FOR PRIVACY
Tech State/Province: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Postal Code: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Country: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Phone: REDACTED FOR PRIVACY
Tech Email: REDACTED FOR PRIVACY
Registry Security ID: REDACTED FOR PRIVACY
Security Name: REDACTED FOR PRIVACY
Security Organization: Cybersecurity and Infrastructure Security Agency
Security Street: REDACTED FOR PRIVACY
Security City: REDACTED FOR PRIVACY
Security State/Province: REDACTED FOR PRIVACY
Security Postal Code: REDACTED FOR PRIVACY
Security Country: REDACTED FOR PRIVACY
Security Phone: REDACTED FOR PRIVACY
Security Email: REDACTED FOR PRIVACY
Name Server: karsyn.ns.cloudflare.com
Name Server: mitchell.ns.cloudflare.com
DNSSEC: unsigned
「REDACTED FOR PRIVACY」は、例えばこのサイトのように運営者に関する情報を公開したくない際などに用いられます。「Whoisの代理公開」や「Whois情報非公開」などと呼ばれ、インターネット上においては広く認められている慣行です。
政府機関などがこのような表示をするのは一見して不可解に思えますが、これは(GSAから2021年に.gov関連業務が移管された)CISAによる方針です。ここにおいてネームサーバーと(登録があれば)セキュリティー関連のメールアドレスのみが公開するといった方針が示されています。
その代替としてかどうかは不明ですが、CISAのGitHubリポジトリ「dotgov-data」において毎日更新される管理組織等の情報が存在します。これによると、freedom.govは「Executive,Executive Office of the President」すなわち大統領府(EOP)によって取得されていることが分かります。
大統領府においてはこれまでdata.govなど、時々の政権が着目してきた話題に関するWebサイトの開設・運営がなされてきました。このためトランプ政権が「freedom.gov」において何らかの注力している政策の実現などに関するコンテンツなどが公開される可能性が考えられます。
バイブコーディング感
以上のように大統領肝いりである可能性が高い「freedom.gov」は現在構築中とのことです。ただ、遅くとも19日の13時30分時点でアクセスが可能となっています。

GIGAZINEが19日11時57分に公開した記事の段階ではCloudflare Zero Trust上に構築されたログイン画面が表示されているとのことでした。しかしその後13時30分にアクセスしたところ、画像のようなランディングページが表示されていました。
画面中には日本語で「Freedom Is Coming 情報は力です。表現の自由という人権を取り戻しましょう。準備してください。」と書かれており、Three.js等を用いて実装された「Freedom」のぼかしなども付けられています。日本語の文章が用意されていることから、日本に関するコンテンツも公開される可能性が考えられます。
しかしながらこのランディングページでさえも作りが粗い面が見られます。例えば<head>タグ内において設定されているtwitter:creatorには@freedomというものが設定されています。twitter:creatorはそのコンテンツを作成したXアカウントを示すものであり、このWebサイトでは私のアカウントである@Kig_OsumiAkariが設定されています。
このため、Xにおける@freedomアカウントは「freedom.gov」に関連するものであるという期待があります。このアカウントを覗いてみるとしたの画像のようなものでした。

これは明らかに異なる「Freedom」でしょう。調べてみると「Freedom」というiOS向けのスクリーンタイム管理アプリのXアカウントであることが分かります。このため「freedom.gov」に掲載されているのは明らかにおかしな話です。
今後Xが強引に「freedom」というスクリーンネームを取り上げて「freedom.gov」に引き渡すという可能性も考えられますが、生成AIによるバイブコーディングを十分な検証を経ないままそのまま公開してしまった、という可能性が大きいのではないでしょうか。バイブコーディングは極めて便利ではありますが、.govに置くようなサイトが見た目だけ優先したハリボテサイトである必要はありません。
"「言論の自由」への抑圧"に対抗するためか
報道によれば、このWebサイトの開発計画を進めているのは(外務省にあたる)国務省であることが明らかとなっています。国務省の報道官は「ヨーロッパ特化の検閲回避プログラム」の存在そのものは否定したものの「デジタルの自由は国務省の優先事項であり、これにはVPNなどのプライバシー保護技術や検閲回避技術の普及も含まれます」としており、トランプ政権が「自由」を阻害するとみなしているEUのデジタルサービス法(DSA)やイギリスのオンライン安全法などに対する対抗措置の可能性が示されています。
国務省内でチームを率いているとされるサラ・ロジャーズ氏は以前よりヨーロッパにおける「検閲」に対して強い態度で臨んでいます。Grokによる性的画像の生成に不具合があることを理由にイギリス政府によるXの禁止案が浮上した際に、インタビュー上で非難を行っており、「freedom.gov」の計画は突如持ち上がった計画ではないことは明らかです。
I’m traveling in Europe on a diplomatic passport, so I thought I’d take this opportunity to say a few things ordinary Europeans (and Brits) can’t. https://t.co/CazvGQ31at pic.twitter.com/drgkXQ6S9P
— Under Secretary of State Sarah B. Rogers (@UnderSecPD) December 6, 2025
2025年12月にXはEUのDSA違反によって巨額の罰金を課せられており、アメリカの現政権から見た際の"「言論の自由」への抑圧"は実際に進んでいると考えられます。国務省内においてはヨーロッパとの外交関係の悪化が懸念されているとのことですが、方向性としては突飛なものではないといえます。
また、ロイター通信によると、国務省内に設置された freedom.gov の構築チームには、過去にDOGEに所属していたことで知られるエドワード・コリスティンさん(2005年生まれ)が関わっている可能性が高いとされています。コリスティンさんは現在ホワイトハウス内に設置された「National Design Studio」に所属されているとされており、確かに政府の関係者ではありますが、以前から機密情報を扱うには疑問符がつけられていた人物でもあります。このような人物を活用するようなチームが果たして本当に「自由」を実現するようなサイトを構築するのかどうかは疑問です。
関連リンク
- freedom.gov
- Exclusive: US plans online portal to bypass content bans in Europe and elsewhere - Reuters
- State Dept plans 'FREEDOM.gov' website to fight EU internet censorship - The Post Millennial
- アメリカの国務省が各国政府に禁止されたコンテンツを閲覧できるようにするためのポータル「freedom.gov」を開発中 - GIGAZINE
最後に
- 前回の技術に関する記事: 「note」が記事の自動翻訳機能を発表、情報共有コミュニティ「Zenn」が同様の機能を発表した4日後に
EUにおいて2022年策定のデジタルサービス法(DSA)などを理由とした大規模プラットフォームに対する調査は近年相次いでおり、結果として中国やアメリカのプラットフォームの調査やその結果に伴う罰金の支払い命令が発生してしまっています。
この調査の内容が適正であったとしても、調査の対象となるプラットフォームの選定に問題があるという批判は不適当なものではないと考えています。もちろんプラットフォームにおける不透明な広告の掲載やその放置、違法なコンテンツの継続掲載とそれに伴う収益獲得などに関してメスが入るのは良いことでしょう。しかしながら、それが特定の国家に対する「武器」のように扱われてしまうとみなされてしまうのも仕方のないことではあるでしょう。
「freedom.gov」が本当に「他国に禁止されたコンテンツを公開する」のであれば、それを国家が運営することの是非はありますが歓迎されうるものでしょう。合衆国憲法修正第1条に掲げられている「言論の自由」を外国にもたらそうとすると考えるのであれば、これまでのアメリカによる活動の延長線としてとらえることも不可能ではないかもしれません。
しかしながら、トランプ政権は以前から虚偽報道などを理由としてラジオ局VOAやRFA/RFEに対する資金提供の大幅縮小を行っており、DOGEなどもこれに与していました。アメリカ国内においてもPBS(テレビネットワーク)やNPR(ラジオネットワーク)の支援を行っていたCPBが、補助金の打ち切りを理由として解散してしまっているように、国外はおろか国内の「自由」も縮小傾向にあります。
このようにDOGE関係者も関与している「freedom.gov」の設立はこれとは矛盾する動きのように思えます。一方「表現の自由」を声高々に掲げて運営されているSNSとしてParlerやTruth Socialなどが挙げられます。このようなSNSは往々にしてアメリカ国内のトランプ支持層に対して人気のあるプラットフォームになっています。しかしながら、これらの問題点として、その所有者は本当の自由に関して何も責任を負う必要が無いということが挙げられます。特定の層に対して与えられる「自由」は、それを所有しているものにとって都合の良い「自由」である、というのはなかなか嫌なものです。
そしてトランプ大統領やその周辺はブラジルやドイツにおける「右翼」に対して度重なる支持を表明してきました。例えば、ブラジルのボルソナロ前大統領派が最高裁と対立した際、イーロン・マスクさんやトランプ陣営は「表現の自由の侵害」を理由に前大統領側を強く擁護しました。しかし、これは法治国家としての規制に対する異議申し立てというよりも、 「自分たちと志を同じくする勢力への加勢」 という側面が強いものです。暴力的なコンテンツの掲載制限等に関して。このような環境下における「自由」の意味はシラミのように湧き出る対抗勢力からの自由といった意味しかないのでしょうか。
もちろんアメリカの都合の良い「自由」がVOAやRFA/RFEから発されていたことは否定できないでしょうし、マスメディアがいついかなる時も本当の自由を追い求めていたとも思いません。しかしながら、他国から彼ら流にコントロールされた「自由」が提供され、それを行う政府の存在というのはなかなか気味が悪いものといえるのではないでしょうか。
今後「freedom.gov」がどのようなサイトになるのかは現状はっきりしません。しかしその名に恥じないようなコンテンツが形成されていくことを祈っています。