スポニチが「国際信州学院大学」の入試出題ミスを報じ即削除

Yahooニュースにも配信されたが、スポニチ内部で何らかの圧力があった可能性(?) / 2026年06月16日

長野県安雲野市に本拠を置くとされる「国際信州学院大学」は、2026年6月16日に大正8年度入試における出題ミスをWebサイトで公表しました。これは「倫理学」においてドイツ語の講演記録を基に著述家のフランス革命に対する見識を受験生に問うものでしたが、その講演においてフランス革命を取り扱っていないことが「発覚」したことによるものです。

これを基にスポーツニッポン新聞社は「国際信州学院大 入学試験に出題ミス発覚し謝罪 「大正8年度国際信州学院大学一般選抜で判明」」と題した記事を配信しましたが、 公開後1時間程度で削除 されてしまいました。この記事ではその概要とこれがはらむ問題について簡単にまとめます。

結論

  1. 国際信州学院大学大正8年度入試で出題ミスが発覚
  2. スポニチが出題ミスを知らせる記事を配信するも速やかに削除される
  3. スポニチ内部で何らかの事情が発生した可能性

「出題ミス」

2026年6月16日14時11分、国際信州学院大学はWebサイト上及びX上において、大正8年度入試の出題ミスがあったことを報告し、「お詫び」を行う旨を公開しました。この出題ミスは1919年3月15日に行われた「倫理学」の試験におけるもので、出題側が出題文の文意を取り違えていたことが原因とのことです。

110年越しの訂正は、2026年3月27日に外部の予備校講師より指摘があったことを始まりとして、「出題委員ならびに問題作成に関わっていない教員による慎重な調査・検討」を行った結果明らかとなったものとされています。当該問題においては、フランス語の講演のドイツ語訳において「大きな変化」をフランス革命であるという前提に立っていましたが、これは同時期に進行していたプロセインにおける改革を示していたことが発覚したとのことです。問題中において4人の著述家に対する「大きな変化」に対する見識を問いていましたが、カントはプロセインにおける改革以前に死去していることから問題不成立としたとしています。

これに伴って16名の追加合格者が発生したものの、これまで9人の受験者及びその家族と連絡が取れていないとのことです。国際信州学院大学は、心当たりがある場合は広報課もしくはアドミッションセンターに連絡するように呼び掛けています。

スポニチが記事配信

これを受けてスポーツニッポン新聞社は、同社のWebサイト「スポニチアネックス」及び提携しているニュースサイト(Yahoo!ニュースなど)に対して「国際信州学院大 入学試験に出題ミス発覚し謝罪 「大正8年度国際信州学院大学一般選抜で判明」」と題した記事を公開・配信しました。しかしながら、 公開後に削除 されてしまったようです。

X上で調べる限り最も古い投稿は14時50分に行われており、同投稿の作成者によれば、15時03分には削除されていたとのことです。Internet Archiveに唯一残されているアーカイブは日本時間14時58分に行われていますが、この時点で削除されてしまっていたようです。

Google検索で「https://www.sponichi.co.jp/society/news/2026/06/16/kiji/20260616s00042000184000c.html」を検索した結果のスクリーンショット。スポニチアネックスの「国際信州学院大 入学試験に出題ミス発覚し謝罪 「大正8年度国際信州学院大学一般選抜で判明」」が検索結果に表示される様子が分かる。

Google検索で記事のURLをそのまま貼り付けて検索すると、検索結果にスポニチアネックス上で配信された形跡が見られます。また、記事を配信する際に使用する画像そのものは記事作成時点でアクセス可能であり、記事が実際に配信されていた可能性を大きく高めていると考えられます。

スポニチアネックス上で公開が続けられている国際信州学院大学の「お詫び」PDFの1枚目を画像にしたもの。「国際信州学院大学HPから」とのみ触れられている。

スポーツ新聞に限らず、一度作成された原稿は少なくともそのまま世に出るわけではなく、「デスク」に相当する別の記者のチェック及び修正を少なくとも通すことが知られています。裏を返せば、公開されたニュースはダブルチェックを行っていることとなります。

その上で速やかに削除されているのであれば、これを書いた記者及びデスクが十分な確認を行わず公開し、後から誤報の可能性などに気づいた当人が削除したか、社内の別の人間が削除を行ったのかということとなります。記事公開現在、スポーツニッポン新聞社からの声明等は無く、どのような圧力があったのかなどを考えることは難しい状況となっています。

関連リンク

最後に

ご存じの通り国際信州学院大学は架空の大学であり、当然ながらこの「出題ミス」も創作です。とはいえ、わざわざこんなことを書かなくとも、大正8年の入試の出題ミスが今更発覚したところで殊更問題として取り扱う教育機関は少数でしょうし、国信大のWebサイトの各所に「気づく」ための仕掛けが多数設置されています。個人的にはかなり丁寧に作られており、「受け取り手を騙して入学金をだまし取ってやろう」といった類の悪意を感じるようなものではありません。ちなみに入試が行われた日付はとあるビデオ発祥のミームに由来しているのでしょうが、これで気づくのは困難だと思います。

しかしながら、スポニチはこれに気づかず記事を配信してしまいました。しかも14時11分の国信大側の公開から 記事公開までどんなに遅くとも39分 しかかかっておらず、十分な取材等は行っていないと考えられます。

発表報道と同様であると考えたため取材を行わなかったのでしょうが、発表報道が成り立つためにはその発表の発信源が十分に信頼できると報道機関側が認識していることが必要です。右から左に情報を流すことそのものの問題とは別に、そもそもその情報が報じるにあたって十分に信頼できるかを確かめる必要があるのです。

今回の事態は「AIに淘汰される」といったそういう話ではなく、そもそもマスメディアとしてそのような情報を発信することそのものの意義が問われていると言えます。幸いなことに記事そのものは早期に削除されましたが、本質的には マスメディアは不確定性の極めて高い情報を発信してはいけない のであって、 スポニチ内部のチェック体制に重大な疑義を呈されてもおかしくありません

現状記事を消してうやむやな状態となっているのですが、SNS上で反応があることから分かるように既に様々な人に読まれてます。Webサイトでの発信ですので意識が薄くなってしまっているのでしょうが、「記事は読者の手に届いてしまったら修正が難しい」という新聞時代の常識を改めて振り返ってみてはいかがでしょうか。

Writer

Osumi Akari

カテゴリ