明治時代の地学の教科書を読んでみる

文語の塊でよく面白がって勉強できたな / 2022-09-09T00:00:00.000Z

教科書というものは制度として確立していなくとも学校教育に付き物なものです。例えば江戸時代の日本に存在していた「寺子屋」と呼ばれたものは、公にサポートされていたのではなく農閑期にその辺の「学のある」人が地域の子供たちへ向けて読み書きそろばんを教えたというのが大半です。しかしそのような中でも教科書に近しいものとして、「往来物」というお手紙のやり取りを本としたものが盛んに用いられていました。

明治時代になり欧米スタイルを導入することで列強サイドにジョインすることをモットーとした政府は、「学制」という明らかに実情を反映していない公教育スキームをメイクしました。そこで全国的に統一された「教科書」というものが作られるようになりました。

もちろん一度に国定教科書が導入されたわけでもなく、色々な教科書が制作された時期も存在しました。というわけで今回は明治時代の地学に関する教科書の一つ「地文説畧」を見ていこうかなと思います。

結論

  1. 文語なので無駄に壮大に聞こえる
  2. なんだかんだでいいこと言っている

地文説畧

地文説畧(hdl: 2309/76558)は1881年の小学生向け教科書で、100ページほどしかありません。多分内容も簡単だと思うので見ていきましょう。まずは前文を…

地文説畧の2ページと3ページ

崩し字読めね~~~!

いや崩し字とはいってもそんなに難しくないことは分かっているのですが、一般人(というか小学生)がこういった文字を読めると思っていたのでしょうか。

幸いなことに本文はきちんと楷書で書かれていました。約140年しかたっていない現代の生物でも読めたことに涙が止まりません。とはいえ文字が読めることと理解できることには天地の差があります。

例えば「mi wile e moku.」という文章があったとして、これの意味を読み取れる人はあまり多くはない(多磨霊園駅を除けば、駅で適当な人に聞いたところでまともな答えは返ってこない)でしょう。しかしながら使われている文字はアルファベットなので文字を「読むこと」は出来ます。そういったことは古典の解読に限らず起こるものなので一般に注意する必要がありますね。というわけで読み進んでいきましょう。

第一 地形

凡ソ地表ニ現ルル…

うーん、文豪か?

という疑問は嘘なのですが、用いられている漢字がIMEパッドで手書き入力しても出てこなかったのでここで引用を切りました。たった140年くらいしかたっていないのに手書き入力しても出てこない文字が小学生向けの教科書に載っていたのには少々驚かされました。漢字すらも入力できない未来人は超漢字でも買えということでしょうか。とはいえこれで切るには忍びないので最後の総論だけはきちんと読んでいきましょう。

第七 総論

吾人ハ前論ニ陳述セシ各種ノ作用ヲ茲ニ概言シテ此編ノ局ヲ結バントス

夫レ吾人生息スル所ノ地球上ニ流行スル所ノ各種ノ作用ハ悉く運動ニアラザルナシ地球一轉シテ晝夜ヲ生シ氛圍氣震動シテ熱、光、及蒸氣を放散シ諸蒸發シテ空中ニ散シ凝縮シテ雲トナリ雨トナリ雪トナリ以て海陸ニ降ル其陸上ニ降ルモノハヨリテ河水トナリ海ニ注グ而ノ波濤は岸渚ヲ浸シ潮流ハ海中ヲ周流ス地球ノ内部ノ熱力ノ潜伏スル処ニシテ其發出スルニ及ンデハ地ヲ震シ火孔ヲ開キ或ハ隆起シ或ハ陥落ス

且ツ夫レ地球ハ植動物ノ如ク生活スルモノニアラズト雖モ其ノ表面ノ運動變化ハ終始變スルコトナシ之を地球ノ生活ト云フモ(なべぶたにれっかの字)可ナリ

めっちゃいいこと言っている…感じがする…

一部Unicodeの範囲で使用できない文字があったので置き換えている部分はありますが、1時間かけて何とかテキストにすることが出来ました。「表面ノ運動變化ハ終始變スルコトナシ」としているのはプレートテクトニクスなどの片鱗すら無かった時代を感じますね。

あと何気に「雰囲気」が全部旧字体で書かれている状態を初めて見た気がする。「氛圍氣」なんだ。

※この節においては『地文説畧』(東京学芸大学附属図書館所蔵)を一部改変し、転載しています。

関連リンク

最後に

Code4Lib JAPAN 2022という3-4日で開催されたカンファレンスをYouTubeでラジオ代わりに聞いていたのですが、このアーカイブを使用した授業資料の話が普通に面白かったので突発的に記事を書きました。

明治時代の教科書をまじまじと見たことはあまりなかったのですが、色々な意味で面白かったですね。関連リンクに挙げさせていただいたリンクから他の教科書や様々な教科のものを見ることが出来ますので、もし興味があるのならばぜひご覧ください。

Writer

Osumi Akari