フンガ・トンガと「ペケリス波」

メインから外れているけど取り敢えずメモ / 2022-09-15T00:00:00.000Z

2022年1月15日に発生した「フンガ・トンガの噴火」は記憶に新しいですよね。その噴火規模もさることながら、海底ケーブルの切断や航空機接近の困難さで小さな島国で噴火が発生した際の支援に関する問題点も浮き彫りになった噴火であると思っています。

この噴火に関する学術的分析は当然ながら(大学入試共通テスト実施日というタイミングではありましたが)噴火当日から行われていました。その成果の一つとして9月12日にプレスリリースがなされたのが「ペケリス波(Pekeris Wave)」の観測がなされたというものがあります。あまり大気力学に詳しくはないのですが、プレスリリースと論文から読み取れる内容をざっくり触れていこうかと思います。

ちなみに全ての「ペケリス波」に鍵括弧を付けている理由としては、まだ学術用語として固まっていないという点が関係しています。別に私がMarkdownの太字の付け方を忘れたということではないことをご理解ください。

結論

  1. 大気波を実観測とシミュレーションで解析
  2. 理論上存在するとされた「ペケリス波」の実在を確認

噴火と大気波

噴火をした際には大なり小なり衝撃が発生します。もちろん人の心に対する衝撃も相当なものなのですが、物理的な振動というべき衝撃もまた多く発生します。分かりやすいものとしては火山性地震というものが存在します。

しかしこの物理的な振動は火山性地震に限ったものではありません。火山から何かが噴出する時、当然ながら元々あった空気を押しのけるという性質があります。そうすると大気中へと圧縮波が放たれます。というわけで今回の噴火で発生した大気中の波、大気波の動きを見てみましょう。

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半分ネタバレに近しいのですが、正確に言えばこの映像で表現されている大気波の動きは実測ではなく地球シミュレータによるシミュレーションです。最初に出ているラム波はほとんど音速で伝わっていっています。少し遅れて出てきているのが「ペケリス波」ですね。

ちなみにラム波とペケリス波が出ていった後に見られる「大気重力波」とは、東大佐藤薫研究室のコラムによれば「大気中の浮力を復元力とする大気の主要な波の一つ」とのことです。LIGOとかで観測している重力波とは名前こそ同じもののメカニズム的には全く異なるらしいです。

「ペケリス波」

今回発見された「ペケリス波」とは、1937年にペケリス(C. L. Pekeris)さんが理論的に存在を予言していたものの、この85年間発見されていなかったものです。この研究では直接「ペケリス波」を観測したというよりは、「ペケリス波」が出ているシミュレーションが現実とよく符合することから、ペケリス波の存在が示されたという感じらしいです。

このシミュレーションは地球を水平には5km、鉛直には0.3kmで区切ったモデルを作成し、3次元的に噴火による波動の発生を計算したものということです。当然ながら鉛直方向の観測を行うことは難しいので、シミュレーションで鉛直方向の動きを見たということですかね。

さらにはこれまで蓄積された気圧の観測データを再観測することで、ラム波が観測された後に「ペケリス波」が見られることが示されています。すなわち「ペケリス波」は噴火特有のものではないということです。

関連リンク

最後に

ニュースリリースを見て15分で書き始めた記事です。正直メインにやっている分野からは離れすぎているのですが、傍目に見ている分でも面白そうなので取り敢えず記事にしました。

「大気の川」をウィキペディア日本語版へ立項した時も感じましたが、AMSは基本的にオープンアクセスなのは読んでいる方としては嬉しいです。しかも単に無料なものではなく、ライセンスがCC BYなのであまり気を使わなくて楽だし。

Writer

Osumi Akari

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