三角州ではなく扇状地である「ファンデルタ」

扇状地が海に届いてしまった件 / 2023-01-26T00:00:00.000Z

河川の下流には三角州と呼ばれる地形が良く形成されることで知られています。これは河口に近づくにあたって河川の流速が遅くなっていくことから砕屑物の堆積が進むことによって作られる地形です。しかしながら全ての河川に三角州が存在するわけではありません。

というわけで今回はそのような場合に形成される地形の1つである「ファンデルタ(fan delta)」についてざっくり説明していこうかと思います。

結論

  1. 三角州が形成されないことがある
  2. 扇状地がそのまま海に接する場合のことを指す

三角州…?

「ファンデルタ」という単語を聞いた際に多くの方は「扇状地(fan)」なのか「三角州(delta)」なのか、どちらかであるのは分かるもののどちらであるのかと確信をもって選択するのは難しいことだと思います。定義から言えばこのファンデルタというものは扇状地と見なすべきもので、一言で言えば「扇状地がそのまま海に接したもの」を指すものです。

つまりその河川においては目立った形で三角州は形成されていないということです。このサイトでは比較的抑制した文になっていますが、三角州についての文章を読むとどのような河川の河口にも形成されるのではないかと思ってしまう人が多いと思っているので、意外に感じた方がいるかもしれません。確かに三角州の概念は極めて多様で「湾入状三角州」というよく分からないものまで存在しています。しかしながら山岳地帯から直に注ぐ河川などではそれが形成されるよりも前に扇状地が形成され、もはやその扇状地単体で河川が終わってしまっているという場合があります。こうした場合は無理矢理形成された地形を三角州と見なすよりも、扇状地が海岸まで達したものと見る方がよほど自然でありより本質的な理解が出来ます。個人的にはファンデルタという概念は、恐らくそのようなところから生えた概念であると思っています。

扇状地が海岸まで達していることから直接結びつかないかと思いますが、ファンデルタが形成されるような場所には海中にまで扇状地が発達していることがあります。この場合において「扇状地が発達している」というのは海中で新たに扇状地が形成されているという意味ではなく海面上にある扇頂から一続きとなっているという意味です。といっても地上にのみ収まっている通常の扇状地とは異なり、海面周辺で堆積環境が大きく変化します。そのためこれを勘案した解析を行う必要があります。

実例

代表的な例として、Wescott & Ethridge (1990)で例として挙げられているものを紹介してみようかと思います。


大きな地図を表示

上記の地図はアラスカ州にあるCopper Riverという河川の河口にあるファンデルタです。OSMですと分かりづらいかもしれませんが、扇状地がそのまま海岸まで達しています。他の例としてはジャマイカのYallahs Riverという河川が挙げられていました。

Yallahs Riverのファンデルタ

これはアラスカ州のものと比較して小さなものですが、扇状地がそのまま海岸まで達しているものとなっています。ファンデルタ上には少なくとも2つの町が形成されていることも分かりますね。特に左岸にある町は「人間が計画してやったぞー!」という声が聞こえてきそうな街路を持っており、ファンデルタ本体とは全く関係ありませんが面白いなと感じました。

ちなみにこの画像はeLandjamaicaというサイトから公的な地図をエクスポートしてきたものです。トップページにはスマホでも使えることがデカデカと書いてありましたが、どう考えてもPCからの方が使いやすいのでは…という気持ちになってしまいました。ジャマイカのICT事情はあまり詳しくないのですが、スマホ所有者の方がよほど多いのでしょう。

参考文献

最後に

前回のざっくりわかる堆積システムシリーズ: 湾入状三角州という微妙な存在感の三角州

三角州が河川の下流に必ずしも形成されるわけではないということは想像つく方も多いかと思いますが、扇状地が河口まで達することを想像したことがある方はあまり多くないかと思い記事にしました。この記事を書くためだけに図書館に行くのは単純に面倒で、読み込むのはさらに面倒という感情を持ってしまいました。トレンドブログの中身がクッソ薄い理由が分かったような気がします。

Writer

Osumi Akari