令和8年熊本地震の影響を受けた地域住民による情報サイト「やつしろ災害情報共有」をJPYCで支援する

少額の支援でもリアルタイムで可視化される、JPYCによる災害時の支援事例として参考となる可能性 / 2026年08月12日

2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震は、最大震度7を記録した地震であり、熊本県を中心に多大な被害を生じさせています。「やつしろ災害情報共有」は八代市・氷川町において、その住民同士が災害や避難生活に関する情報を共有するために立ち上げられたサイトであり、その活動はテレ朝NEWSなどでも取り上げられています。

「やつしろ災害情報共有」は八代に拠点を置く個人によって運営されており、公的支援などがあるサービスではありません。そのため継続してサービスを運用するために、電子決済手段「JPYC」を用いた支援を呼び掛けています。この記事ではその概要と方法について簡単に書いていこうかと思います。

結論

  1. 単にアドレスが書いてあるだけではなく、HashPort Wallet向けボタンやWalletConnectに対応
  2. ほぼリアルタイムで更新される支援総額パネルも
  3. 災害時の情報共有システムの支援手法の1つとして参考になる事例

やつしろ災害情報とJPYC

やつしろ災害情報共有」は7月28日の本震後に、自らも被災者である個人が立ち上げた情報共有サイトです。八代市及び氷川町の災害情報・支援情報等を集約しており、「避難所」・「給水所」など各々が必要とする情報を絞り込んで閲覧できるような形が取られています。情報によっては地図上で情報を確認することが可能となっており、自らの近くにある支援拠点を確認することや、反対に困っている人々がどこにいるのかを確認することが出来るようになっています。

情報を無料で掲載することが可能であり、住民・地域が自らが充実した情報を提供できるようになっていると言えます。その取り組みに関してはテレ朝NEWSが以下の動画のように取り上げています。

一方で「やつしろ災害情報共有」は個人で運営されているサイトであり、運営にかかわる費用を賄うために「運営を支える」ページにおいてPolygon上のJPYCを用いた支援を募っています。「JPYC」はブロックチェーン上で発行されている電子決済手段であり、1JPYCが1円として発行・償還が可能な仕組みを持っています。

「やつしろ災害情報共有」におけるJPYCでの支援画面のスクリーンショット

JPYCの発行体であるJPYC株式会社の岡部代表取締役は個人として10万JPYCを送金した旨をXにおいて公表しており、その他多数のJPYCユーザーが支援を行った旨を公表しています。なお、JPYCの大半はKaiaチェーン上で発行されていますが、今回「やつしろ災害情報共有」が受け入れているのはPolygon上のJPYCですので注意する必要があります。

やってみる

「運営を支える」ページにおいては、支援額・支援されたJPYCを使用する目的・その方法などが詳細に記載されています。記事公開時点では以下の目的でJPYCによる支援を使用するとしています。

  • これまでの開発費の相殺
  • 情報収集・運営体制の構築(業務委託費としてJPYC支払い)
  • 八代市・氷川町の経済支援(業務委託費としてJPYC支払い)
  • 次の災害に備える運営・開発体制の強化

「目標」パネルにおいてはこれらの目的に対してどの程度集まったのかが分かりやすく示されており、それぞれの活動に必要な金額がどの程度なのかを感覚的に理解することが容易となっています。また、JPYCの活用実験を兼ねているとしており、現状では「やつしろ災害情報共有」を支えるために唯一の方法となっています。

重要な点としては、これは 「やつしろ災害情報共有」というサービスを支援するためのもの であって、地震の被害にあった方に 直接的に支援を行うものではない ということです。とはいえ、「やつしろ災害情報共有」に多数の情報が集まっている以上、このサービスをサポートすることによって間接的ではありますが支援を行うことが出来ると考えることは可能です。

これらに関してHashPort Walletを使用している場合はHashPort Wallet for Biz向けに用意されているガスレス決済を使用し、POLの用意・負担無しに「やつしろ災害情報共有」を支援することが可能となっています。HashPort Walletを使用していないJPYCユーザーも、ガスレスではありませんが支援することが可能となっています。

私はHashPort Walletをメインで使用していませんので、WalletConnectもしくは公開されているアドレス 0x5E1Db1B516DEbe0A64C7f42a752705D1D23CAe0B に対して直接使用しているウォレットを用いて送金することにします。今回はせっかくWalletConnectが用意されておりますのでそれを活用していきましょう。

「やつしろ災害情報共有」におけるウォレット接続ボタン

ここにおいて「パソコンからはスマートフォンのアプリでQRコードを読み取ってつなぎます」と書かれていますが、これは必ずしも必要とする作業ではありません。確かにスマートフォンを用いた保護は有用であり、パソコンに秘密鍵を直接保存するよりかはリスクを低減させるものとなっていますが、ハードウェアウォレットやペーパーウォレットを用いた保護という手段もあるため、お使いのウォレットに合わせた操作を行ってください。

既にWalletConnectを使用されたことのある方にとっては言うまでもありませんが、適切なネットワーク(Polygon)を選択した上で、ウォレット上で複数のアドレスを管理されている場合は適切なアドレスを選択する必要があります。なお、現状 yatsushiro-saigai.info に関して知名度が「非常に低い」というアラートが表示される場合がありますが、これに関してはサイトを立ち上げたばかりですので仕方がないと言えるでしょう。とはいえ、通常このようなアラートはscamに引っかかる可能性を下げるのに有用なものですので、無碍にしないことが重要であると考えられます。正しくやつしろ災害情報共有であることを確認した上で、送金に移りましょう。

「やつしろ災害情報共有」における支援金額入力画面

500JPYC・1000JPYC・3000JPYC・5000JPYCからの選択ボタンがありますが、その下のスペースにおいて送金したい額を自由に入力することが出来ます。小数も入力可能なようですが、一応は整数を入力してみましょう。今回は370円相当のJPYCを送金することとします。なお、この支援は何度でも行うことが出来ますので、送金に関して不安がある場合は少額で試して成功してから大きな金額の支援を行ってもよいですし、一般的には推奨される行為です。

「370JPYCを送る」ボタンを押すと、使用しているウォレット上での承認画面に遷移します。ここに関しては各々のウォレットによって異なりますが、ネットワーク・送金額・送金先を確認した上でガス代を調整して送金処理を行います。ブロードキャスト後にトランザクションが成功すれば、支援は完了します。

370JPYC送金後の「やつしろ災害情報共有」における「2026年8月6日以降に集まった額」パネルのスクリーンショット

支援に関してはほぼリアルタイムで「運営を支える」ページの最上部にある「2026年8月6日以降に集まった額」パネルに反映されます。私の支援(Polygonscan)は1分ほどでパネルに反映されました。単にウォレットのアドレスが書いてあるだけではなく、支援総額が分かりやすい形で反映されるというのは嬉しいものであると感じます。

関連リンク

最後に

個人的にはJPYCを用いることによって、災害時の義援金等の受け取りの高速化が見込める1つの事例となるのではないかと感じています。一般的な銀行口座は開設するためには一定の手間が必要とされ、任意団体となればそのハードルは犯収法などの観点から跳ね上がってしまいます。災害時に義援金・寄付金を受け取ろうとしても(通常使用している口座とは別に)そのための口座を立ち上げるのは困難であり、公的セクターやよく知られた福祉団体 ではない 主体が「やつしろ災害情報共有」のようなサービスのコストを負担するという場合には既存のシステムですと上手く対応できない側面があるのは事実だと思います。

JPYCを用いることによって、このように支援を受ける側にとって、 適切なウォレット等を用意するだけで速やかに義援金・寄付金等の受け取りを始めることが出来ます 。一方でこれは銀行口座などとは異なり誰にも信頼できるか否かをチェックされていないということですから、 支援する側は支援する先がきちんと運用されているか否かを慎重に検討する必要がある と思います。

また、JPYCの発行・償還を行うJPYC EXのアカウント開設時には結局のところマイナンバーカードによる個人認証が必要とされ、(目的にかなう内容に対してでもそうでなくとも)日本円で支払い等が行われる場合には個人・法人の銀行口座に一旦収まることとなります。このため、寄付されたJPYCが寄付時に掲げていた内容に使用されたか否かに関して、オンチェーンで確認することが出来なくなってしまう可能性が高いものとなっています。したがって、現状のスキームは相当な善意のもと動いているという認識を持つ必要があると考えています。

さらに言えば、このようなJPYCによる支援は将来的に「オンチェーンで確認できるようにする」ためとして、寄付金を原資としてサービスを提供する側へJPYCの使用を強要することを、被災地において促進しかねないという側面があるかもしれません。例えば寄付金を受け取る際には日本円ではなく、ウォレットを用意した上でアドレスを提供しなければならないというルールが被災地において作られてしまう可能性があるということです。現状JPYCが十分に広まっていない以上、そのメリットを理解し納得して使うならいざ知らず、災害時に半ば押し付けられるようにして使用を強要されることは、被災地におけるJPYCのイメージに強烈な負のイメージを持たれかねません。

今回の事案に関してはサイト維持や情報の確認などに関してのみ用いられるとされており、支援されたJPYCの使用先は極めて限定的ですので問題は少ないと思われます。しかしながら今後の災害においてJPYCそのものを被災者等に広く分配するなどの活用手法(この場合は電子決済手段等取引業の問題の方が大きい可能性はありますが)を取った場合においては上に示したような問題が発生するでしょう。

そのため、義援金等をJPYCを用いて募る場合、「被災地においてJPYCがどのように受け入れられるのか」というところも含めた設計が求められる可能性があります。記事公開時点で25万JPYC以上が集まっており一定の成功を収めている事例ではありますが、この事例をもって 災害の度にJPYCによる支援が必ずしも成功すると証明されたわけではない ということを忘れないことが大切でしょう。

Writer

Osumi Akari

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