6月1日より、BTCFiは「HashPort Wallet」経由でJPYCレンディングを開始しています。これはJPYCを預け入れると預入期間に応じて利率が付与され、引き出し時に「利息」が得られるものです。
6月2日時点において、レンディング画面上に「JPYC預金」などと記されていることが確認されていますが。この記事ではこの概要とレンディングに関して簡単にまとめます。参考になれば幸いです。
結論
- 銀行等の「預金」とは異なる
- 預金保険などの「元本保証」はない
- JPYCそのものの安全性とは無関係
「JPYC預金」?
6月1日のHashPort Walletのアップデートに伴って、HashPort Wallet内から「JPYCレンディング」が使用することが可能となったことが告知されました。HashPort Walletから当該画面を開いたところ英語UIが表示されましたが、そこには「JPYC預金」と記されていました。

ここに誤解が生じる余地があります。ここにおいて「預金」と記されていますが、銀行等における「預金」とは大きく異なります。日本において「預金」は一般的に預貯金取扱金融機関が取り扱う「預金」のことを指しており、この「預金」は預金保険などを通して強力に保護されており、1つの金融機関において最大元本1000万円までの普通預金とその利息が、決済用預金に関してはその全額が保護されています。
しかしながらここに表記されている「預金」は大きく異なります。確かにこのサービスにおいては、預け入れを行うと引き出しまでの期間に応じて「利息」が付与されます。ただし 預金保険などが適用されるものではなく 、あくまで海外に拠点を置く「BTCFi」が提供するサービスです。Bifrostによる「BTCFi」は、大まかに言えば二段構えのサービスであり、
- ビットコインを担保としてドルとして扱える過剰担保型のステーブルコイン「 BtcUSD 」を発行する
- 発行された「BtcUSD」をDeFiなどで運用して利益を得る
といったものです。今回のJPYCレンディングはこのうちの2にあたる「BtcUSD」をJPYCを用いて調達するものであると考えられ、DeFiにおける取引手数料や貸出金利などが「利率」の源泉となると思われます。
なおこのサービスは、シンガポールに本拠を置くBifrost Networkが「BTCFi」として提供しており、ウォレットの開発元であるHashPortやJPYCの発行体であるJPYC株式会社が直接提供するものではありません。JPYCの発行・償還を行うJPYC株式会社の代表取締役である岡部氏も、サービス名に関して「当社と関係ないサービスとはいえ、せめてJPYC貯コインとかにしてほしい!」と述べています。
当社と関係ないサービスとはいえ、せめて JPYC 貯コイン とかにしてほしい!
— 岡部典孝 JPYC代表取締役 (@noritaka_okabe) June 1, 2026
Depositの誤訳か
フォローするのであれば、名詞としての「deposit」を機械翻訳等を用いて翻訳した場合、「預金」となる可能性が高いと言えます(個人的には"鉱床"の方がよほどなじみがありますが)。英日辞典で調べてもそのように書いてあります。一応はシンガポールに本拠を置くサービスですので、日本語の「預金」が含む意味を深く知らなかった可能性はあります。
とはいえ「JPYC預金」として紹介するのは先述した通り、銀行等の預金と誤認する可能性は十分高く、かつリスクを正しく説明しているとは言えません。HashPortの告知ツイートにあるように、「JPYCレンディング」と表記するのが良い案内であるとは思います。
本日、HashPort Wallet をアップデートしました!🎉
— 【公式】HashPort|HashPort Wallet (@hashport_io) June 1, 2026
アップデート内容は…
・新たに組込サービス「BTCFi」に対応し、JPYCレンディングが行えるようになりました
ぜひ最新バージョンへアップデートしてご利用ください 📲https://t.co/XmwO5BvNms#hashportwallet
JPYCそのものの安全性とは無関係
他に注意するべき点として、電子決済手段たるJPYCそのものとのリスクとは異なるものという点があります。確実に日本円に返ってくることを「安全性」とするのであれば、JPYCは発行額の101%を法務局へ供託しているため、預け入れられた預金の多くを貸し出ししている銀行と比較すれば「安全性」が高いと言えます。
また、今回の「JPYCレンディング」のリスクとして考えられるものは一般的なDeFiのリスクとほぼ同様であり、期待された利率が得られない可能性やJPYCそのものが返ってこない可能性、コントラクトのバグやハッキングなどによって流出してしまう可能性などが考えられます。これらはJPYCそのものとは切り離されたリスクであり、「JPYCレンディング」のリスクです。
繰り返しますが、 今回の「JPYCレンディング」と電子決済手段としての「JPYC」の安全性・リスクは異なる ものです。関係性としては、安愚楽牧場の商品は日本円で購入が行われていましたが、安愚楽牧場そのもののリスクは日本円そのもののリスクとは異なるのと同じ、というようなものでしょうか。
関連リンク
- BTCFi Partners Use Case #2: HashPort Wallet. Earn on JPYC With No Lock-Up, No Maturity Date - Bifrost
最後に
確かに小さなミスではあり、悪意があるとは限りませんでしたが、銀行等の「預金」と誤認してJPYCを入れてしまう人がいるかもしれないと思いこの記事を作成しました。一旦預けてしまうと「預金」と同様の保護を受けるのは困難です。もし、銀行等の「預金」と一緒ではないかと思われた方は、銀行預金の保護の仕組みとDeFiにおける保護の少なさ(自己責任の割合の大きさ)の双方を調べてみるとよいかと思います。
また、HashPortはこのような明らかに誤認を誘うようなサービスを「組み込みサービス」として紹介するのは、企業として誠実とは言えないのではないかと感じています。アプリ内の場所を割きわざわざ告知まで行い、HashPort Walletから申し込むとボーナス金利までつけるキャンペーンを行っているのに無関係のサービスとしています。今後このようなリリースを行う際はせめてきちんとした事前確認を行ってほしいとは思います。